うつ病の家族への接し方で最初に出てくるのが「がんばれと言わない」です。ただ、言ってはいけない言葉だけ増えていくと、何も言えなくなります。
必要なのは、言い換えの候補です。そして「そっとしておくべきか」という問いにも、条件つきの答えがあります。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。
目次
うつ病の人に言ってはいけない言葉と、その言い換え

禁句として挙げられる言葉には共通点があります。本人の努力が足りないという前提が入っていることです。
| 避けたい言い方 | なぜ響かないか | 言い換え |
|---|---|---|
| がんばって | すでに限界までがんばっている | ここまでよく持ちこたえたね |
| 気の持ちようだよ | 意思で変えられない状態への否定 | つらいのは本当だと思う |
| みんな大変だよ | 比較されて孤立が深まる | あなたのつらさは分かりにくいと思う |
| 早く元気になってね | 期限を切られると焦る | 待てるから、急がなくていい |
| 何がつらいの | 説明を求められると負担になる | 話したくなったら聞くよ |
| 気晴らしに出かけよう | 外出そのものが負担 | 家にいていいよ。何か持ってこようか |
| 考えすぎだよ | 感じ方を否定される | そう感じるくらいしんどいんだね |
| ○○すればよくなるよ | 助言は責任の転嫁に聞こえる | 一緒に病院に行こうか |
言葉を選ぶより、「評価しない」「急かさない」「決めさせない」 の3つを守るほうが実用的です。
決めさせないことの意味
うつの時期は判断力が落ちます。「どうしたい?」と聞かれること自体が負担になります。
- 食事は「何が食べたい?」ではなく「これ、食べられそう?」
- 予定は「いつなら行ける?」ではなく「◯日に予約したけど、無理なら変えるよ」
- 選択肢は2つまでに絞る
選ばせるより、こちらが決めて、断れる余地を残すという形が負担が少なくなります。
うつ病の家族をほっとくべきか、そばにいるべきか
「そっとしておいたほうがいい」という情報と「一人にしてはいけない」という情報が両方あり、迷います。
分けて考えてください。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 話しかけられたくなさそう | 見える範囲にいて、話しかけない。これは放置ではありません |
| 食事や水分が取れていない | 声をかける。取れていないことは伝えてよい情報です |
| 何日も部屋から出ない | 見守る。ただし食事と睡眠は確認します |
| 「死にたい」と言った | 一人にしない。すぐ相談してください |
| 家族が消耗している | 距離を取ってよい。共倒れを避けるほうが優先です |
放置と見守りは違います。 見守りは、干渉しないけれど状態は把握している状態です。放置は、状態が分からなくなっている状態です。
「死にたい」と言われたとき
否定せず、話をそらさず、聞いてください。
- 「そんなこと言わないで」と止めない
- 「なぜ」と理由を問い詰めない
- 一人にしない
- その日のうちに医療機関か相談窓口へ連絡する
この発言があった場合は、様子を見る対象ではありません。 かかりつけ医、精神科、いのちの電話などの相談窓口に連絡してください。
うつ病の家族が壊れないための線引き
うつの家族を支える側も消耗します。ここを見ないと、結局どちらも動けなくなります。
家族が消耗しているときの整理は家族が精神疾患で疲れたときにまとめています。
うつ病で受診につながらないとき
「病院に行こう」と言っても動かない場合、伝え方を変えると通ることがあります。
| 効きにくい | 通りやすい |
|---|---|
| うつ病かもしれないから病院へ | 眠れていないみたいだから、一度診てもらおう |
| 精神科に行こう | まず内科で体を診てもらおう |
| 行かないとよくならない | 行くだけ行って、合わなければやめていい |
| いつ行く? | ◯日に予約したけど、大丈夫そう? |
それでも動けない場合、外出そのものが負担になっている可能性があります。自宅に医師が伺う訪問診療という方法があります。
進め方は本人が受診したがらないときの進め方で詳しく扱っています。
高齢の親の場合
高齢者のうつは、気分の落ち込みより体の不調として現れることが多くあります。「どこも悪くないと言われたのに調子が悪い」という状態が続いている場合、うつを疑う理由になります。
詳しくは老人性うつとは何かと老人性うつの家族の対応で扱っています。
うつ病で使える制度をまとめて確認する
診断がつくと、使える制度が増えます。手続きの前に診断が必要なものが多いため、受診が入口になります。
| 制度 | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 自立支援医療(精神通院) | 精神科の医療費の自己負担が原則1割。所得に応じた月額上限 | 市区町村 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 各種の割引や支援。自治体により医療費助成 | 市区町村 |
| 障害年金(精神) | 一定の状態が続いている場合の年金 | 年金事務所 |
| 傷病手当金 | 働けない期間の所得の補填 | 加入している健康保険 |
| 介護保険 | 訪問介護、デイサービス、ショートステイ | 地域包括支援センター |
| 生活保護(医療扶助) | 医療費の自己負担なし | 市区町村 |
自立支援医療の自己負担の上限は、住民税非課税で収入が年826,500円以下なら月2,500円、それを超える場合は月5,000円、生活保護を受けている世帯は0円です。統合失調症・躁うつ病・うつ病・認知症等は「重度かつ継続」(長く医療が必要な状態として、負担の上限が別に定められる区分)の対象に含まれ、中間所得層でも上限が設けられます。
出典 東京都福祉局自立支援医療
こころの訪問診療では、自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金・介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)・傷病手当金などの診断書や申請書を訪問時に作成できます。書類のために別途通院する必要はありません。
うつ病の家族の接し方についてよくある質問
何と声をかければいいですか
「評価しない」「急かさない」「決めさせない」の3つを守れば、言葉そのものはあまり問題になりません。「つらいのは本当だと思う」「急がなくていい」あたりが無難です。
ほっとくのはよくないですか
放置と見守りは違います。干渉しないけれど食事と睡眠は把握している状態は、見守りです。話しかけられたくなさそうなときは、見える範囲にいるだけで十分です。
「死にたい」と言われました
否定せず、理由を問い詰めず、一人にしないでください。その日のうちに医療機関か相談窓口へ連絡してください。
家族の自分がつらくなってきました
家族向けの相談窓口があります。医療機関でも家族の相談を受けられます。距離を取ることは見捨てることではありません。
本人が受診を嫌がります
外出そのものが負担になっている可能性があります。自宅に医師が伺う訪問診療という方法があります。ご家族だけのご相談から始められます。
通院が難しいときは自宅での診療という方法があります
こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。
- 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
- ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
- 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
- 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます
お電話でのご相談 03-6689-8121
うつの時期は、予約を取って着替えて家を出るという一連の動作そのものが負担になります。行けないまま時間が過ぎると、治療が始まりません。
こころの訪問診療は精神科医が自宅に伺う診療で、うつ病も対応疾患に含まれます。基本は月2回の定期訪問で、訪問のたびに服薬の状況と生活のリズムを確認します。ご家族だけのご相談から始められます。
まとめ
禁句として挙げられる言葉には、本人の努力が足りないという前提が共通しています。言葉を選ぶより、「評価しない」「急かさない」「決めさせない」の3つを守るほうが実用的です。
「ほっとく」については、放置と見守りを分けてください。干渉しないけれど食事と睡眠は把握している状態は見守りです。話しかけられたくなさそうなときは、見える範囲にいるだけで十分です。
「死にたい」という発言があった場合は、様子を見る対象ではありません。その日のうちに連絡してください。そして、支える側が消耗しているなら距離を取ってよいです。共倒れを避けるほうが優先されます。
