老人性うつの家族の対応 わがままに見えるのは症状のことがある

老人性うつの家族の対応 わがままに見えるのは症状のことがある

老人性うつの家族が最もつらいのは、症状そのものより「わがままに見えること」かもしれません。

何をしても文句を言う、動こうとしない、こちらの提案を全部断る。この状態が続くと、支えている側の気持ちが持ちません。

これが症状としてどう説明されるのか、そして何を優先すればよいのかを整理します。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。

老人性うつでわがままに見えるのは症状のことがある

老人性うつでわがままに見える言動と背景

高齢者のうつでは、次のような状態が現れます。

家族から見える様子症状としての説明
何を提案しても断る決めることそのものが負担になっている
同じ訴えを繰り返す不安が強く、確認せずにいられない
「どうせだめだ」と言う思考が否定的な方向に固まっている
動こうとしない意欲が落ちている。怠けているのとは違う
感謝がなく文句が多い余力がなく、否定的な面しか見えていない
些細なことで怒る刺激に耐える力が落ちている

「性格が変わった」と感じたなら、それは病状の変化かもしれません。 もともとの性格に戻ったのでも、わがままになったのでもない可能性があります。

判断力が落ちていることを前提にする

うつの時期は、選ぶ・決めるという作業が重い負担になります。

  • 「何が食べたい?」→ 答えられない
  • 「どうしたい?」→ 決められない
  • 「行く?行かない?」→ 断るほうが楽なので断る

選ばせるほど断られます。 こちらが決めて、断れる余地を残す形にすると通りやすくなります。

通りにくい聞き方通りやすい言い方
何が食べたい?おかゆ作ったよ。食べられそう?
病院どうする?◯日に予約したけど、無理なら変えるよ
散歩に行かない?玄関まで一緒に出てみようか
何かしたいことある?テレビつけておくね

老人性うつの家族が優先して守るのは水分・食事・服薬・睡眠・安全・気分の変化

全部を整えようとすると続きません。優先順位をつけます。

1
水分
脱水は体調を一気に崩します。せん妄(急に頭が混乱し、時間や場所が分からなくなったり、見えないものが見えたりする状態)の引き金にもなります。飲めているかを毎日確認します。
2
食事
量より回数。食べられるものを、少しずつでも入れます。
3
服薬
飲めているか。飲み忘れや二重服薬がないか。
4
睡眠
眠れているか、昼夜が逆転していないか。
5
安全
転倒、火の始末、外に出てしまわないか。
6
気分の変化
「死にたい」という趣旨の発言がないか。

部屋の片づけや外出、趣味の再開は後回しで構いません。 上の6つが守れていれば、いまは十分です。

「死にたい」と言われたとき

高齢者のうつでは、この訴えを軽く扱わないことが特に重要です。

  • 否定せず、話をそらさない
  • 理由を問い詰めない
  • 一人にしない
  • その日のうちに医療機関か相談窓口へ連絡する

「年だから仕方ない」「弱気になっているだけ」と受け取らないでください。

今日はこの順番で見る

全部を一度に整えることはできません。命に関わる順に並べると、こうなります。

順番見るところ危ないと判断する目安
1水分1日にコップ4杯も飲めていない
2「死にたい」という発言一度でも口にしたら、その日のうちに連絡
3食事1日1食も食べられない日が続く
4服薬持病の薬が飲めていない
5睡眠眠れない、または一日中寝ている
6安全転倒、火の消し忘れ

気分を良くすることは、この順番には入っていません。体が保たれていれば治療で戻せます。まず水分と薬、そして「死にたい」という言葉だけは見逃さないでください。

老人性うつで寝たきりに近い状態になったとき

うつが重くなると、ほとんど動かなくなることがあります。この段階では、次のことが実務的な課題になります。

課題対応
食事と水分少量を回数で確保する。飲めない場合は医療機関へ
排泄便秘が続くと体調とせん妄に影響します
皮膚同じ姿勢が続くと床ずれのリスクがあります
通院移動そのものが難しくなります
介護保険申請していない場合は申請を検討します
家族の負担一人で抱えない形にします

通院ができない状態は、訪問診療の対象です。 うつで動けない状態は、身体的に歩けないのと同じくらい通院を難しくします。

介護保険の申請には主治医意見書が必要です。訪問診療でも作成できます。

老人性うつの家族が疲れ切る前に

支えている側が消耗すると、対応の質が落ちます。そして本人はそれを敏感に感じ取ります。

できること中身
自分の睡眠を確保する夜通し付き添う日が続かないようにします
交代する人を作る親族、ヘルパー、ショートステイ
相談先を持つ地域包括支援センター、精神保健福祉センター、医療機関
全部やろうとしない掃除や食事の準備は外部サービスに回せます
期待の水準を下げる良くなったり悪くなったりを繰り返します

家族が消耗しているときの整理は家族が精神疾患で疲れたときにまとめています。

老人性うつを認知症と間違えていないか

老人性うつは認知症と取り違えられることがあります。うつであれば治療で戻る可能性があるため、この見分けには意味があります。

見る点老人性うつ認知症
始まり方比較的はっきりしているいつからか分かりにくい
物忘れの自覚過剰なほど気にする自覚が乏しい
質問への答え方「わかりません」で終わる見当違いでも答えようとする
進み方治療で改善する可能性がある徐々に進む

詳しくは老人性うつとは何かで扱っています。

受診を拒まれる場合は本人が受診したがらないときの進め方、支えている側が消耗している場合は家族が精神疾患で疲れたときを確認してください。

通院が難しい場合は精神科の訪問診療とはを確認してください。

老人性うつを医療機関のほかに相談できる先

医療機関に行く前でも、相談できる窓口があります。

相談先対象と内容
地域包括支援センター高齢者全般。認知症の相談、介護保険の申請
精神保健福祉センター各都道府県・政令市に設置。精神保健の相談
保健所精神保健の相談、訪問相談
ケアマネジャー介護保険を使っている場合
家族会同じ立場の人と話せる場
かかりつけ医紹介や助言

高齢の方については地域包括支援センター、それ以外は保健所や精神保健福祉センターが入口になります。「どこに相談していいか分からない」という状態のまま時間が過ぎるのが、いちばん避けたい形です。

老人性うつの家族の対応についてよくある質問

わがままなのか病気なのか分かりません

判断力が落ちて決められない、余力がなくて否定的になる、というのは症状として現れます。性格が変わったと感じたなら、病状の変化を疑ってよい場面です。

何を優先すればいいですか

水分、食事、服薬、睡眠、安全、気分の変化の6つです。片づけや外出、趣味の再開は後回しで構いません。

励ましてはいけないのですか

「がんばって」は効きません。「ここまでよく持ちこたえたね」「急がなくていい」のほうが伝わります。

動けなくなってきました

通院が難しい状態は訪問診療の対象です。介護保険の申請も検討してください。主治医意見書は訪問診療でも作成できます。

「死にたい」と言われました

否定せず、理由を問い詰めず、一人にしないでください。その日のうちに医療機関か相談窓口へ連絡してください。

通院が難しいときは自宅での診療という方法があります

通院が難しいときは、ご自宅での精神科診療という方法があります

こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。

  • 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
  • ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
  • 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
  • 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます

お電話でのご相談 03-6689-8121

うつで動けない状態は、身体的に歩けないのと同じくらい通院を難しくします。こころの訪問診療は精神科医が自宅に伺う診療で、うつ病も対応疾患に含まれます。

基本は月2回の定期訪問で、訪問のたびに服薬の状況と生活のリズムを確認します。自宅で血液検査を行うこともでき、介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)の作成にも対応しています。

ご本人が受診に前向きでない場合も、ご家族だけのご相談から始められます。

まとめ

老人性うつで「わがままに見える」状態は、症状として説明できることがあります。決めることそのものが負担になり、余力がなくて否定的な面しか見えなくなっている状態です。

選ばせるほど断られるため、こちらが決めて断れる余地を残す形にすると通りやすくなります。優先して守るのは、水分、食事、服薬、睡眠、安全、気分の変化の6つです。

動けない状態が続いて通院が難しくなったら、訪問診療の対象です。介護保険の申請も検討してください。そして支えている側が消耗しないよう、交代する人と相談先を早めに確保してください。

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