老人性うつと認知症の見分け方 体の不調として出るのが特徴です

老人性うつは体の不調として出る 認知症との見分け方と家族用チェック

高齢の親が、急に元気をなくした。何を聞いても「わからない」と答える。物忘れも増えた気がする。

この状態を見ると認知症を疑いますが、うつが原因のことがあります。 そして、うつであれば治療によって戻る可能性があります。ここを取り違えると、治せる状態を放置することになります。

見分け方とチェックを整理します。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。

老人性うつは体の不調として現れることが多い

高齢者のうつは、若い世代のうつとは現れ方が違います。「気分が落ち込む」という訴えが前に出ないことが多いのが特徴です。

現れ方具体的な訴え
体の症状として頭が重い、めまい、しびれ、食欲がない、体がだるい、眠れない
消化器の不調として胃の不快感、便秘、食べられない
不安として落ち着かない、心配で仕方がない、同じことを繰り返し訴える
物忘れとして覚えられない、集中できない、頭が働かない
意欲の低下として何もする気がしない、外に出なくなった、趣味をやめた

内科を受診して検査をしても異常が見つからない、という経過をたどることがあります。検査で説明がつかない体の不調が続いている場合、うつを疑う理由になります。

「気分が落ち込む」と言わないことがある

高齢の方は、落ち込みを言葉にしない傾向があります。「年のせい」「みんなこんなもの」と受け取っていることも多くあります。

そのため、家族が「うつっぽい」と感じても、本人に確認すると否定されることがあります。本人の自己申告だけでは分かりません。

老人性うつと認知症の見分け方

せん妄は数時間から数日で急に、認知症は数か月から数年かけて変わることを比べた図

もっとも取り違えやすいのが認知症です。うつによる物忘れは、治療で戻る可能性があります。

見る点老人性うつ認知症
始まり方比較的はっきりしている(数週間〜数か月)いつからか分かりにくい
きっかけ配偶者との死別、退職、転居、身体疾患などはっきりしないことが多い
本人の訴え「できない」「わからない」と強く訴える取り繕う、指摘されると怒る
物忘れの自覚過剰なほど気にする自覚が乏しい
質問への答え方「わかりません」で終わることが多い見当違いでも答えようとする
日内の変動朝が悪く、夕方に少し楽になることがある夕方以降に悪化することがある
進み方治療で改善する可能性がある徐々に進む

とくに「わかりません」と答えるかどうかは、家族でも観察できる違いです。認知症では、間違っていても何か答えようとする傾向があります。

ただし、うつと認知症が同時にあることもあります。実際の判断は医療機関で行います。物忘れの見分け全般は物忘れと認知症の違いで扱っています。

老人性うつを家族が答えるチェック

ご本人の様子について、この数か月を振り返ってください。

ご家族が答えるチェック

ここ数か月で、ご本人に当てはまるものを選んでください。

0 項目に当てはまりました。
あてはまる項目を選ぶと、受診の目安がここに表示されます。

※このチェックは受診の目安を整理するためのもので、診断ではありません。当てはまる数が少なくても、生活に支障が出ているなら受診の対象になります。医療機関では、問診に加えて、うつと認知症を見分けるための検査を組み合わせて判断します。

「死にたい」という趣旨の発言があった場合は、チェックの数に関係なく、すぐに医療機関へ相談してください。 高齢者のうつでは、この訴えを軽く扱わないことが特に重要です。

老人性うつはどこを受診すればよいか

高齢の方の場合、行き先が3つに分かれます。迷ったときの選び方です。

こんなとき行き先
気分の落ち込みや不安が前に出ている精神科、心療内科
物忘れのほうが目立つ物忘れ外来、脳神経内科
体の不調が続いていて、検査で異常が出ないまずかかりつけ医。そこから紹介してもらう
本人が精神科を嫌がるかかりつけ医から入る。健康診断や血液検査という理由でも構わない

うつと認知症は同時にあることもあります。どちらの入口から入っても、必要なら医師が振り分けます。行き先で迷って受診が遅れるほうが問題です。

老人性うつのきっかけになりやすい出来事

老人性うつは、はっきりしたきっかけの後に始まることがあります。

  • 配偶者や親しい人との死別
  • 退職、社会的な役割の喪失
  • 転居、施設への入所
  • 身体の病気、入院、手術
  • 体が思うように動かなくなったこと
  • 家族との別居、独居になったこと

こうした出来事の後に元気がなくなった場合、「落ち込むのは当たり前」と受け取られて、受診が遅れることがあります。当たり前の反応と、治療の対象になる状態は別です。

判断の目安は期間と程度です。2週間以上続き、食事や睡眠、日常の動作に影響が出ているなら、相談の対象になります。

老人性うつは治療で戻る可能性がある

老人性うつは、治療によって改善する可能性がある状態です。だからこそ、認知症と取り違えたまま時間が過ぎることの損失が大きくなります。

医療機関では、問診に加えて、身体の病気が隠れていないかを確認します。甲状腺の機能低下、ビタミンの不足、薬の影響なども、似た状態を作ることがあります。

こころの状態を数値でとらえる尺度としては、厚生労働省の国民生活基礎調査で使われているK6(国の調査で使われている、こころの状態を点数で表す6項目の質問)のように公的な調査で用いられているものがあります。

参考 島根県が公開するK6日本語版の質問票(PDF)

高齢者では、薬の影響が出やすいため、量や種類を慎重に調整します。すでに飲んでいる薬をすべて把握したうえで組み立てることになります。

家族の関わり方で状態が変わる

うつの時期に「がんばって」「気の持ちよう」と伝えると、本人はさらに自分を責めます。家族の関わり方については老人性うつの家族の対応で詳しく扱っています。

家族の対応は老人性うつの家族の対応、受診の目安を先に確認したい場合は精神疾患のセルフチェックにまとめています。

老人性うつについてよくある質問

老人性うつと認知症はどう見分けますか

始まり方がはっきりしているか、本人が物忘れを強く気にしているか、質問に「わかりません」と答えるか、が観察できる違いです。実際の判断は医療機関で行います。

年をとれば元気がなくなるのは自然ではないですか

程度と期間で分けます。2週間以上続き、食事や睡眠、日常の動作に影響が出ているなら相談の対象です。

検査で異常がないと言われました

検査で説明がつかない体の不調が続いている場合、うつを疑う理由になります。精神科や心療内科での相談をおすすめします。

本人が受診を嫌がります

ご家族だけで医療機関に相談することができます。通院が難しい場合は、自宅に医師が伺う訪問診療という方法もあります。

薬は飲んだほうがいいですか

状態によります。高齢者では薬の影響が出やすいため、量や種類を慎重に調整します。すでに飲んでいる薬をすべて伝えてください。

通院が難しいときは自宅での診療という方法があります

通院が難しいときは、ご自宅での精神科診療という方法があります

こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。

  • 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
  • ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
  • 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
  • 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます

お電話でのご相談 03-6689-8121

うつの時期は、外出そのものが大きな負担になります。予約を取っても行けない、という状態が続くと治療が始まりません。

こころの訪問診療は精神科医が自宅に伺う診療で、うつ病も対応疾患に含まれます。基本は月2回の定期訪問で、訪問のたびに服薬の状況と生活のリズムを確認します。自宅での様子をそのまま見てもらえるため、状態の変化が伝わりやすくなります。

まとめ

老人性うつは、気分の落ち込みとしてではなく、体の不調や物忘れとして現れることが多い状態です。内科の検査で異常が見つからない不調が続いているなら、うつを疑う理由になります。

認知症との見分けでは、始まり方がはっきりしているか、物忘れを本人が強く気にしているか、質問に「わかりません」と答えるかが観察できる違いです。うつであれば治療で戻る可能性があるため、取り違えたまま時間が過ぎることの損失が大きくなります。

死別や退職などのきっかけがあると「落ち込むのは当たり前」と受け取られ、受診が遅れがちです。2週間以上続き、生活に影響が出ているなら相談の対象になります。「死にたい」という趣旨の発言があった場合は、すぐに相談してください。

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