受診したほうがいいのは分かっている。でも本人が行かない。この状態で止まっている家族は多くいます。
説得の言葉を探す前に、なぜ拒んでいるのかを分けてください。理由によって打つ手が変わります。理由が違えば、同じ声かけでも効きません。
理由別の対応と、どうしても動かないときの手段を整理します。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。
目次
受診を拒む理由は4つに分けられる

| 理由 | 本人のなかで起きていること | 効きにくい声かけ |
|---|---|---|
| 自分が病気だと思っていない | 症状を病気として認識していない | 「病気だから行こう」 |
| 精神科への抵抗がある | 精神科にかかること自体への抵抗 | 「精神科に行こう」 |
| 外に出ること自体がつらい | 外出・移動・待合室が負担 | 「近いから大丈夫」 |
| 変化そのものが不安 | 何をされるか分からない不安 | 「行けば分かるから」 |
このうち、認知症や統合失調症では1つ目が中心になります。うつやひきこもりでは3つ目が中心です。同じ「行かない」でも中身が違います。
理由ごとに打つ手を変える
受診の声かけは言い換えで変わる
同じ内容でも、言い方で反応が変わります。
| 効きにくい言い方 | 言い換え |
|---|---|
| 精神科に行こう | 眠れていないみたいだから、一度診てもらおう |
| 認知症かもしれない | 健康診断のついでに、頭の検査も受けておこう |
| おかしいから病院へ | 私が心配だから、付き合ってほしい |
| なんで行かないの | 行きたくない理由を教えてほしい |
| このままだと大変になる | 早めに見てもらうと、できることが増える |
ポイントは、病名を主語にしないことと、本人を評価しないことです。「あなたはおかしい」と伝わる言い方は、ほぼ確実に拒まれます。
嘘をつくべきかどうか
「病院に行く」と言わずに連れ出す方法が紹介されることがあります。ただ、これは一度は成功しても、次から警戒されます。
長く続ける必要がある治療では、信頼が崩れることの損失のほうが大きくなります。目的地を偽らず、目的の説明を変えるという形が現実的です。
受診を拒むときは家族だけで先に相談できる
ここが最も知られていない点です。本人が動かなくても、家族だけで医療機関に相談することができます。
家族だけの相談でできることがあります。
- 状況を伝えて、いまの緊急度を判断してもらう
- 本人への関わり方について助言を受ける
- 受診につなげる順番を一緒に考える
- 訪問診療という選択肢が使えるか確認する
- 使える制度(自立支援医療、介護保険など)を整理する
こころの訪問診療では、ご本人が同席されない状態でのご相談から始められます。ご本人との関わり方を含めて、精神保健福祉士(生活面や制度の相談に乗る精神科の専門職)が一緒に考えます。
公的な相談先もある
医療機関以外にも相談できる場所があります。
| 相談先 | 対象 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者全般。認知症の相談、介護保険の申請 |
| 精神保健福祉センター | 各都道府県・政令市に設置。精神保健の相談 |
| 保健所 | 精神保健の相談、訪問相談 |
| かかりつけ医 | 紹介や助言 |
| ケアマネジャー | 介護保険を使っている場合 |
「どこに相談していいか分からない」という段階なら、高齢の方は地域包括支援センター、それ以外は保健所や精神保健福祉センターが入口になります。
自宅に来てもらう形については精神科の訪問診療とはで扱っています。
通院という形をやめるという手がある
拒否の理由が「外に出るのがつらい」「連れて行けない」である場合、通院を前提にしている限り解決しません。
自宅に医師が伺う訪問診療なら、本人が移動する必要がありません。
| 通院で起きること | 訪問診療の場合 |
|---|---|
| 予約を取り、着替えて、家を出る | 自宅にいるだけでよい |
| 待合室で他の人と一緒に待つ | 待たない |
| 連れて行く途中で興奮する | 移動がない |
| 子どもを預ける必要がある | 預けなくてよい |
| 続かなくなって中断する | 定期訪問で途切れにくい |
こころの訪問診療は、精神疾患により単独での通院が困難な方、引きこもり等で外出が困難な方を対象としています。診療情報提供書はなくてもご相談いただけます。
対象になるかどうかは精神科の訪問診療を受けられる条件で確認できます。
どうしても動かないときに残っている方法
説得も訪問診療も届かない場合に、制度として用意されている道があります。順番に重くなります。
| 方法 | どんなとき | 窓口 |
|---|---|---|
| 保健所・精神保健福祉センターの訪問 | 本人が拒んでいるが、危険はまだない | 保健所 |
| 医療保護入院 | 本人の同意が得られないが治療が必要。家族等の同意と指定医の診察が要る | 精神科病院 |
| 措置入院 | 自分や他人を傷つけるおそれが大きい | 保健所、警察を通じた通報 |
これらは家族が単独で決められるものではなく、いずれも医師の診察が前提です。ただし「こういう道がある」と知っているだけで、相談の場で話が早くなります。
そこまで至る前に打てる手が、訪問診療です。本人が動かなくても、医師のほうが来られます。
受診を待てない場合の判断
次のいずれかに当てはまる場合は、説得を続けるより先に動いてください。
- 自分や他人を傷つけるおそれがある
- 「死にたい」という趣旨の発言がある
- 食事や水分がまったく取れていない
- 急激に混乱が強くなった(せん妄(急に頭が混乱し、時間や場所が分からなくなったり、見えないものが見えたりする状態)の可能性)
- 高熱や強い痛みなど、身体の異常がある
この場合は、かかりつけ医、地域の救急相談窓口、状況によっては119番への連絡を検討します。判断に迷う時間そのものがリスクになる場面があります。
急に混乱が強くなった場合はせん妄に家族ができることを確認してください。
疾患別の進め方
| 状況 | 参考 |
|---|---|
| 認知症で受診を拒む | 認知症の親を精神科に入院させる前に |
| 統合失調症が疑われる | 統合失調症の家族の対応 |
| うつ状態で動けない | うつ病の家族の接し方 |
| 家族が消耗している | 家族が精神疾患で疲れたとき |
本人が受診したがらないときについてよくある質問
無理やり連れて行ってもいいですか
強引な形は、その後の関係と治療の継続に響きます。まず家族だけで相談し、順番を一緒に考えることをおすすめします。
家族だけで相談しても意味がありますか
あります。緊急度の判断、関わり方の助言、受診につなげる順番の整理ができます。訪問診療が使えるかどうかもその場で確認できます。
何度誘っても断られます
理由を分けてください。病気だと思っていないのか、精神科に抵抗があるのか、外出がつらいのか。理由によって打つ手が変わります。
訪問診療なら本人が嫌がりませんか
初回から診察にこだわらず、本人のペースに合わせて段階的に関係をつくる形も取れます。まずご家族からご相談ください。
急いだほうがいい状態はありますか
自分や他人を傷つけるおそれ、死にたいという発言、食事や水分が取れていない、急激な混乱、身体の異常。このいずれかがあるなら、説得より先に連絡してください。
ご家族だけのご相談から始められます
こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。
- 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
- ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
- 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
- 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます
お電話でのご相談 03-6689-8121
こころの訪問診療は、ご本人が同席されない状態でのご相談から始められます。ご本人とどのように関わるかを含めて、精神保健福祉士が一緒に考えます。
長期間医療につながっていない方こそ、訪問診療の対象です。初回から診察にこだわらず、ご本人のペースに合わせて段階的に進めることもできます。診療情報提供書はなくても構いません。
まとめ
受診を拒む理由は、病気だと思っていない、精神科に抵抗がある、外に出ることがつらい、変化が不安、の4つに分けられます。理由が違えば効く声かけも変わります。
声かけは、病名を主語にせず、本人を評価しない形にします。本人が実際に困っていること(眠れない、体がだるい)を入口にするほうが通ります。
本人が動かなくても、家族だけで医療機関に相談できます。外出がつらいことが理由なら、通院を前提にしている限り解決しません。自宅に医師が伺う訪問診療という手段があります。自分や他人を傷つけるおそれ、死にたいという発言、食事が取れていない場合は、説得より先に連絡してください。
