境界性パーソナリティ障害や双極性障害の人との接し方と限界設定

境界性パーソナリティ障害や双極性障害の人との接し方と限界設定

家族や身近な人が精神疾患を抱えているとき、接し方を調べても疾患ごとに書かれていて、自分の状況にどれが当てはまるのか分からないことがあります。

疾患が違っても効く原則は3つに絞れます。否定しない、求めに全部は応えない、線を引く。そのうえで、疾患ごとにどこが変わるのかを見ていきます。

そして、支える側が壊れないことを条件として先に置きます。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。

精神疾患の人との接し方に共通する3つの原則

原則中身
評価しない「がんばれ」「気の持ちよう」は、努力不足という前提が伝わります
急かさない回復には波があります。期限を切ると焦りが症状を悪くします
決めさせない判断力が落ちている時期は、選ぶこと自体が負担になります

そして4つ目として、支える側の安全と健康を守ることを置いてください。これは相手のためでもあります。支える側が倒れると、すべてが止まります。

疾患ごとに効くことが違う

共通の原則の上に、疾患ごとの違いがあります。

疾患特に効くこと避けたいこと
双極性障害睡眠時間の記録。躁の時期の変化を家族が伝える躁の時期に本人の判断で大きな決定をさせる
境界性パーソナリティ障害一貫した対応と、はっきりした線引きその場しのぎで約束を変える
うつ病決めさせない。待つこと励ます、外出に誘い続ける
不安障害安全であることを具体的に伝える「大丈夫」だけで終わらせる
統合失調症体験は否定せず、内容には同意しない説得しようとする

双極性障害の場合

本人が困っているのはうつの時期だけで、躁の時期は「調子がいい」と受け取られます。そのため、家族が躁の時期の様子を医師に伝えられるかどうかが治療を左右します。

睡眠時間の記録が最も役に立ちます。急に短くなったときが、波の始まりのサインです。

詳しくは躁うつ(双極性障害)のセルフチェック双極性障害が重症化するとどうなるかで扱っています。

境界性パーソナリティ障害の場合

見捨てられることへの強い不安が背景にあることが多く、関係が不安定になりやすい特徴があります。

ここで効くのが、一貫した対応です。

場面避けたい対応使える対応
強く責められたその場を収めるために謝って要求をのむ落ち着いてから話すと伝えて、いったん離れる
何度も連絡が来る気分によって出たり出なかったりする出られる時間をあらかじめ決めて伝える
「見捨てるのか」と言われた見捨てないと約束しすぎるいまできることの範囲を具体的に伝える
自傷をほのめかされた要求を全部のむ安全の確保を優先し、医療につなぐ

その場しのぎで約束を変えることが、最も関係を不安定にします。 できないことは最初からできないと伝えるほうが、結果的に安定します。

うつ病の場合

決めさせないことと、待つことが中心になります。詳しくはうつ病の家族の接し方で扱っています。

不安障害の場合

「大丈夫」とだけ伝えても届きません。何がどう安全なのかを具体的に伝えるほうが効きます。

  • 「30分で終わるよ。途中で出てもいい」
  • 「私が一緒に行く。ずっといる」
  • 「無理なら途中で帰っていい。それで問題ない」

逃げ道があることを示すと、動けることがあります。

統合失調症の場合

体験の事実は否定せず、内容には同意しない形が基本です。詳しくは統合失調症の家族の対応で扱っています。

限界設定の言い方

線引きは、拒絶ではありません。関係を続けるための条件として伝えます。

限界設定の言い方(できないこととできることをセットで)
伝えたいこと言い方の例
夜中の連絡は受けられない夜10時以降は出られないけど、朝いちばんに必ず返す
怒鳴られると話せない落ち着いて話せるときに、また聞かせてほしい
金銭的な援助はできないお金は出せない。でも一緒に窓口には行ける
毎日は会えない週に1回、この曜日なら会える

「できない」だけで終わらせず、「できること」をセットで伝えるのがポイントです。

精神疾患を支える側が壊れないための条件

1
自分の睡眠を守る
夜間の対応が続くなら、交代する人を探すか、時間を区切ります。
2
全部を引き受けない
感情の受け止め、生活の世話、通院の付き添い。一人で背負わない形にします。
3
相談先を自分の分も持つ
精神保健福祉センター、保健所、家族会。医療機関でも家族の相談ができます。
4
距離を取ってよい場面を決めておく
暴力があるとき、自分が限界のとき。事前に決めておくと迷いません。

家族が消耗しているときの整理は家族が精神疾患で疲れたときにまとめています。

精神疾患で受診につながっていない場合

接し方の工夫だけで状態が変わることには限りがあります。医療につながっているかどうかが、その先を分けます。

本人が受診を拒む場合の進め方は本人が受診したがらないときの進め方で扱っています。

外出そのものが難しい場合、自宅に医師が伺う訪問診療という方法があります。

使える制度をまとめて確認する

診断がつくと、使える制度が増えます。手続きの前に診断が必要なものが多いため、受診が入口になります。

制度内容窓口
自立支援医療(精神通院)精神科の医療費の自己負担が原則1割。所得に応じた月額上限市区町村
精神障害者保健福祉手帳各種の割引や支援。自治体により医療費助成市区町村
障害年金(精神)一定の状態が続いている場合の年金年金事務所
傷病手当金働けない期間の所得の補填加入している健康保険
介護保険訪問介護、デイサービス、ショートステイ地域包括支援センター
生活保護(医療扶助)医療費の自己負担なし市区町村

自立支援医療の自己負担の上限は、住民税非課税で収入が年826,500円以下なら月2,500円、それを超える場合は月5,000円、生活保護を受けている世帯は0円です。統合失調症・躁うつ病・うつ病・認知症等は「重度かつ継続」(長く医療が必要な状態として、負担の上限が別に定められる区分)の対象に含まれ、中間所得層でも上限が設けられます。

出典 東京都福祉局自立支援医療

こころの訪問診療では、自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金・介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)・傷病手当金などの診断書や申請書を訪問時に作成できます。書類のために別途通院する必要はありません。

精神疾患の人との接し方についてよくある質問

疾患が分からない場合はどうすればいいですか

共通する3つの原則(評価しない、急かさない、決めさせない)から始めてください。そのうえで、医療機関に相談して疾患の見立てを得るのが早道です。

強く責められたときはどう返せばいいですか

その場で言い返さず、落ち着いてから話すと伝えて距離を取ります。要求をその場でのむと、次から同じ形が繰り返されます。

見捨てるようで罪悪感があります

線引きは拒絶ではありません。「できないこと」と「できること」をセットで伝える形なら、関係を続けるための条件になります。

自傷をほのめかされました

安全の確保を優先してください。そのうえで、必ず医療機関か相談窓口につないでください。要求を全部のむ形は、繰り返しにつながります。

家族だけで相談できますか

できます。精神保健福祉センター、保健所、医療機関のいずれでも家族の相談を受けています。

ご家族だけのご相談から始められます

通院が難しいときは、ご自宅での精神科診療という方法があります

こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。

  • 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
  • ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
  • 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
  • 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます

お電話でのご相談 03-6689-8121

こころの訪問診療は、ご本人が同席されない状態でのご相談から始められます。ご本人との関わり方を含めて、精神保健福祉士(生活面や制度の相談に乗る精神科の専門職)が一緒に考えます。

うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害に対応し、通院が難しい方のご自宅へ精神科医が伺います。長期間医療につながっていない方こそ、訪問診療の対象です。

まとめ

疾患をまたいで共通する原則は、評価しない、急かさない、決めさせないの3つです。そして4つ目として、支える側の安全と健康を守ることを置いてください。

疾患ごとに効くことは違います。双極性障害では睡眠時間の記録と家族からの情報、境界性パーソナリティ障害では一貫した対応とはっきりした線引き、うつ病では待つこと、不安障害では具体的な安全の説明、統合失調症では体験を否定しないことが中心になります。

線引きは拒絶ではありません。「できないこと」と「できること」をセットで伝えれば、関係を続けるための条件になります。その場しのぎで約束を変えることが、最も関係を不安定にします。

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