「認知症 精神科 入院」と調べる方の多くは、方法を知りたいのではありません。入院させてよいのかどうかで迷っています。
先に答えると、限界のまま在宅を続けるほうが、本人にとって安全ではありません。入院は見捨てることではなく、状態を立て直すための手段です。
まずその感情に答えたうえで、入院でできることと、その前に確認できることを整理します。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。
目次
入院させるのは可哀想なことなのか
在宅を限界のまま続けることが、本人にとって良いとは限りません。
介護している側が消耗すると、次のことが起こります。
- 対応が雑になり、本人が不安を感じる
- 睡眠不足で判断力が落ち、事故につながる
- 感情が抑えられず、強い言葉や行動が出る
- 家族の関係そのものが壊れる
限界を超えた在宅は、本人にとっても安全ではありません。 入院は見捨てることではなく、状態を立て直すための手段です。
ただし、入院を選ぶ前に確認できることがあります。順番として、そこを先に見ます。
認知症で入院の前に確認すること

このうち1つ目と2つ目が特に見落とされます。 体の不調やせん妄が背景にある場合、それを整えるだけで落ち着くことがあります。
引き金の考え方はBPSDとは何か、せん妄との見分けはせん妄に家族ができることで扱っています。
精神科の入院でできること・できないこと
| できること | できないこと |
|---|---|
| 症状が強い時期の安全の確保 | 認知症そのものを治すこと |
| 薬の調整を、状態を見ながら集中的に行う | 記憶を元に戻すこと |
| 身体の状態の確認と治療 | 退院後の生活を代わりに整えること |
| 家族が休む時間をつくる | 家族の負担をゼロにすること |
| 退院後の生活の調整(相談員が関わる) | ー |
入院は「治すため」ではなく「立て直すため」の手段です。 認知症そのものが治るわけではないという点は、期待とずれやすい部分です。
「死ぬまで入院」になるのか
入院は状態が落ち着いたら退院を目指すのが原則です。ただ、退院先が決まらないまま長期化することがあります。
これを避けるには、入院の時点で退院後の見通しを一緒に考えておくことが重要になります。
- 退院後は自宅か、施設か
- 自宅なら、どのサービスを入れるか
- 施設なら、探し始める時期はいつか
- 退院後の医療は誰が担当するか
入院を決めるときに「出口」も一緒に相談してください。 病院の相談員(医療ソーシャルワーカー(生活面や制度の相談に乗る病院の相談員))が窓口になります。
認知症で入院を検討すべき状態
次の場合は、迷わず相談してください。
- 自分や他人を傷つけるおそれがある
- 食事や水分がまったく取れていない
- 介護している側の安全が保てない
- 身体の状態が危険(脱水、感染、けが)
- 家族が心身の限界に来ている
最後の項目も、正当な理由です。 本人の症状だけで判断する必要はありません。
認知症の精神科入院の費用と期間の目安
相談の場で聞きにくいのが、お金と期間です。目安を先に置きます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 医療費の自己負担 | 高額療養費制度の上限まで。所得により月数万円程度 |
| 食費・部屋代 | 高額療養費の対象外。個室を選ぶと差額が加わる |
| おむつ代・日用品 | 実費 |
| 入院期間 | 状態が落ち着くまで。数週間から数か月まで幅がある |
高額療養費制度は事前に手続きしておくと窓口での支払い自体が上限までになります。加入している健康保険で限度額適用認定証を申請してください。入院が決まってからでも間に合います。
費用と退院後の見通しは、病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)が窓口です。入院を決める場で一緒に確認しておくと、あとで困りません。
後悔しないために確認しておくこと
入院を決めたあとに後悔する方の多くは、次のいずれかが十分でなかったと感じています。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 他に手が残っていなかったか | あとから「もっとできたのでは」と感じないために |
| 家族のなかで話し合ったか | 一人で決めると、あとで責められることがあります |
| 退院後の見通しを聞いたか | 長期化への不安を減らせます |
| 面会や連絡の方法を確認したか | 関われる形を残しておくと気持ちが違います |
| 本人に説明したか | 理解が難しくても、伝える努力をしたという事実が残ります |
「一人で決めた」という状況が、後悔を最も強くします。 親族が協力的でなくても、状況を共有しておくことには意味があります。
訪問診療で何ができるかは精神科の訪問診療とはにまとめています。
認知症でも入院を避けられる場合がある
夜間の落ち着かなさ、暴言、被害的な考えといった症状は、医療で軽くできる余地があります。
体調の確認、環境の調整、薬の見直し。これらを行ったうえでも難しい場合に、入院が選択肢になります。
通院が難しくて医療につながっていない状態であれば、そこが最初のボトルネックです。 自宅に医師が伺う訪問診療なら、連れて行く負担なしに医療につながります。
介護が限界に近い場合の整理は認知症の介護が限界だと感じたときにまとめています。
医療機関のほかに相談できる先
医療機関に行く前でも、相談できる窓口があります。
| 相談先 | 対象と内容 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢者全般。認知症の相談、介護保険の申請 |
| 精神保健福祉センター | 各都道府県・政令市に設置。精神保健の相談 |
| 保健所 | 精神保健の相談、訪問相談 |
| ケアマネジャー | 介護保険を使っている場合 |
| 家族会 | 同じ立場の人と話せる場 |
| かかりつけ医 | 紹介や助言 |
高齢の方については地域包括支援センター、それ以外は保健所や精神保健福祉センターが入口になります。「どこに相談していいか分からない」という状態のまま時間が過ぎるのが、いちばん避けたい形です。
認知症の精神科入院についてよくある質問
入院させるのは可哀想ですか
限界を超えた在宅は、本人にとっても安全ではありません。入院は見捨てることではなく、状態を立て直すための手段です。
入院すると認知症は治りますか
治りません。入院でできるのは、症状が強い時期の安全の確保と、薬の調整、身体の状態の確認です。
入院すると退院できなくなりますか
原則は状態が落ち着いたら退院を目指します。長期化を避けるため、入院を決める時点で退院後の見通しを相談員と話し合ってください。
家族が限界というだけで入院できますか
正当な理由になります。介護している側の安全と健康も判断材料です。
入院の前にできることはありますか
体調の引き金の確認、せん妄の有無、医療での調整、ショートステイ、在宅サービスの追加です。この順で確認してください。
入院の前に、医療で軽くできる部分を確認できます
こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。
- 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
- ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
- 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
- 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます
お電話でのご相談 03-6689-8121
こころの訪問診療は認知症を対応疾患に含む精神科の訪問診療です。夜間の落ち着かなさ、暴言、被害的な考えといった症状について、自宅での様子をそのまま見たうえで対応を検討します。
自宅で血液検査を行うこともでき、体調が引き金になっていないかを確認できます。介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)の作成にも対応しています。
ご契約中の方には緊急連絡先をご案内しており、夜間・休日の急な変化についても24時間お電話でご相談いただけます。ご家族だけのご相談から始められます。
まとめ
限界を超えた在宅は、本人にとっても安全ではありません。入院は見捨てることではなく、状態を立て直すための手段です。
ただし入院の前に確認できることがあります。症状の引き金(痛み、便秘、脱水、感染、薬)、せん妄が混ざっていないか、医療での調整を試したか、ショートステイを使ったか、在宅サービスを入れきったか。この順で見てください。
入院でできるのは安全の確保と薬の調整であり、認知症そのものが治るわけではありません。長期化を避けるため、入院を決める時点で退院後の見通しを相談員と話し合ってください。一人で決めた状況が、後悔を最も強くします。
