「もう限界かもしれない」と検索した時点で、すでにかなり無理をしています。この記事は、いま何を判断すればよいかを短く整理するために書きました。
限界かどうかは、本人の症状の重さではなく、介護している側の状態で決まります。 そして、限界を感じている状況の一部は、医療で軽くできます。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。
目次
限界のサインは介護する側に出る
次のどれかに当てはまるなら、すでに支援を入れるべき段階です。
| サイン | 意味 |
|---|---|
| 3日以上まとまって眠れていない | 判断力が落ちます。事故につながります |
| 手を上げそうになった、または上げてしまった | 誰にでも起こり得ます。責める前に人を入れてください |
| 自分の受診や服薬をやめている | 介護者が倒れると全部が止まります |
| 涙が出る、何も感じなくなった | うつ状態に入っている可能性があります |
| 仕事を辞めることを考え始めた | 辞める前に使える制度があります |
| 本人に消えてほしいと思ってしまった | 珍しくない感情です。限界のサインとして扱ってください |
最後の項目は、多くの家族が口にできずに抱えています。 その感情が出ること自体が異常なのではなく、状況が限界に来ているという信号です。
眠れていないことは最優先で扱う
夜間に対応が必要な状態が続くと、介護している側の睡眠が削られます。睡眠が足りない状態では、冷静な対応ができません。
夜間の落ち着かなさは、医療で扱える部分があります。せん妄(急に頭が混乱し、時間や場所が分からなくなったり、見えないものが見えたりする状態)が混ざっていることもあります。詳しくは夜間せん妄と原因別のせん妄を確認してください。
いま連絡できる先を緊急度順に
認知症の介護は医療で軽くできる部分がある

限界を感じる原因になっている症状のうち、いくつかは医療の対象です。
| 困っていること | 医療で扱える部分 |
|---|---|
| 暴言・暴力 | 引き金(痛み、便秘、環境、薬)の確認と調整 |
| 夜眠らない | せん妄の有無、生活リズムの調整、薬の見直し |
| 被害的な考え、幻覚 | 精神科での治療の対象 |
| 介護を拒否する | 関わり方の助言、原因の確認 |
| 食べない、水分を取らない | 身体の状態の確認 |
| 落ち着かず動き回る | 引き金の確認 |
これらは認知症の行動・心理症状(BPSD)と呼ばれ、引き金を取り除くと軽くなることがあります。中核症状(記憶や見当識(いまの日付・場所・相手が分かる感覚)など、認知症そのものによる症状)とは性質が違います。詳しくはBPSDとは何かで扱っています。
薬で本人をおとなしくさせるという話ではありません。 痛みや便秘、環境の問題が背景にあることが多く、そこを直すと落ち着くことがあります。
訪問診療で何ができるかは精神科の訪問診療とはにまとめています。
使える制度を一度に確認する
限界の場面で制度を調べる余裕はありません。窓口に「何が使えるか教えてほしい」と伝えるのが最短です。
| 制度・サービス | 何ができるか | 窓口 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問介護、デイサービス、ショートステイ | 地域包括支援センター、市区町村 |
| ショートステイ | 数日間預かってもらう | ケアマネジャー |
| 訪問診療 | 医師が自宅に来る | 医療機関に直接 |
| 精神科訪問看護 | 看護師が定期的に来る | 主治医の指示書が必要 |
| 自立支援医療 | 精神科の医療費の自己負担を軽くする | 市区町村 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 各種の割引や支援 | 市区町村 |
| 介護休業・介護休暇 | 仕事を辞めずに休む | 勤務先 |
| 成年後見制度 | 金銭管理や契約の支援 | 家庭裁判所、地域包括 |
仕事を辞める前に、介護休業を確認してください。 辞めてしまうと収入と社会とのつながりの両方を失い、状況がさらに厳しくなります。
行方不明への備えは認知症の徘徊で探す場所にまとめています。
認知症で施設を考え始めたとき
施設を検討することは、あきらめではありません。ただ、順番として確認しておくことがあります。
- ショートステイを使ったことがあるか(まず短期で試せます)
- 在宅で使えるサービスを入れきったか
- 医療で軽くできる症状が残っていないか
- 本人の状態が「いまの形」で固定だと決めつけていないか
夜間の落ち着かなさや暴言が医療で軽くなると、在宅で続けられる場合があります。逆に、限界のまま在宅を続けると、共倒れになります。
精神科への入院を考え始めている場合は認知症の親を精神科に入院させる前にを先に読んでください。入院でできることと、できないことがあります。
一人で認知症の介護をしている場合
一人暮らしの親を離れて介護している、あるいは同居で一人で抱えている場合、限界は早く来ます。
- 見守りのサービス、緊急通報の仕組みを入れる
- 訪問系のサービスで人の目を増やす
- 親族に状況を共有する(協力が得られなくても、知らせておく)
- ケアマネジャーに「一人で見ている」と明確に伝える
「一人で見ている」という情報自体が、支援の優先度を変えます。 遠慮して伝えないと、そのぶん支援が薄くなります。
認知症の介護が限界のときについてよくある質問
限界かどうかの判断がつきません
介護している側の状態で判断してください。3日以上眠れていない、手を上げそうになった、自分の受診をやめている。このどれかがあるなら支援を入れる段階です。
手を上げてしまいました
誰にでも起こり得ることです。まず距離を取り、そのうえで必ず誰かに相談してください。ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関のいずれでも構いません。
施設に入れるのは見捨てることになりませんか
なりません。在宅を続けて共倒れになるほうが、本人にとっても不利になります。ただし、その前に医療で軽くできる症状が残っていないかは確認してください。
仕事を続けられません
辞める前に勤務先の介護休業・介護休暇を確認してください。制度を使わないまま辞めると、収入と社会とのつながりを同時に失います。
本人を病院に連れて行けません
自宅に医師が伺う訪問診療があります。ご家族だけのご相談から始められます。
ご家族だけのご相談から始められます
こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。
- 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
- ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
- 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
- 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます
お電話でのご相談 03-6689-8121
こころの訪問診療は、認知症を対応疾患に含む精神科の訪問診療です。暴言、夜間の落ち着かなさ、被害的な考えといった症状について、自宅での様子をそのまま見たうえで対応を検討します。
ご契約中の方には緊急連絡先をご案内しており、夜間・休日の急な変化についても24時間お電話でご相談いただけます。介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)の作成にも対応しています。
ご本人が受診に前向きでない場合も、ご家族だけのご相談から始められます。
まとめ
限界かどうかは、本人の症状の重さではなく、介護している側の状態で決まります。3日以上眠れていない、手を上げそうになった、自分の受診をやめている、消えてほしいと思ってしまった。このどれかがあるなら、すでに支援を入れる段階です。
連絡先は、ケアマネジャー、地域包括支援センター、かかりつけ医または精神科の順です。暴言、不眠、介護拒否、被害的な考えは医療で扱える部分があり、引き金を取り除くと軽くなることがあります。
仕事を辞める前に介護休業を確認してください。施設を検討する場合も、その前にショートステイと在宅サービス、そして医療で軽くできる症状が残っていないかを確認する順番になります。
