認知症の徘徊で探す場所は5km圏内 警察庁の統計が示す見つけ方

認知症の徘徊で探す場所は5km圏内 警察庁の統計が示す見つけ方

外に出たまま戻らない。玄関の物音で夜中に目が覚める。認知症の家族を介護していて、この不安が一番重いという方は多くいます。

探す場所には順番があります。まず半径5km、なかでも1km以内です。令和6年に認知症で行方不明となり亡くなって発見された491人のうち、382人がその範囲で見つかっています。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。

認知症の行方不明は年間1万8千人を超える

警察庁の統計では、令和6年に届出があった行方不明者は82,563人で、そのうち認知症またはその疑いによるものは18,121人でした。全体の21.9%にあたります。

出典 警察庁令和6年における行方不明者届受理等の状況(PDF)

行方不明者全体
82,563人
うち認知症またはその疑い
18,121人

令和6年の行方不明者届の受理状況(警察庁の統計より作成)

珍しいことではない、というのがまず押さえるべき事実です。そして統計には、探し方を変える数字が入っています。

見つかるかどうかは最初の1日で決まる

所在が確認された16,942人のうち、届出を受理した当日に確認されたのが12,476人でした。2〜3日以内が4,156人です。

所在確認までの期間人数
届出受理の当日12,476人
2〜3日4,156人
4〜7日195人
8〜14日54人
15日以降61人

3日以内でほぼ全体になります。逆に言えば、時間が経つほど確認される件数は急速に減ります。

だから、警察への届出をためらう時間が最も惜しいということになります。「そのうち帰ってくるかもしれない」と数時間待つ判断が、統計上は不利に働きます。

亡くなった方の77.8%は5km圏内で見つかっている

認知症で亡くなって発見された方の距離の内訳
令和6年に認知症で行方不明となり亡くなって発見された491人のうち、382人(77.8%)が5km圏内で発見(警察庁の統計より作成)

統計のなかで最も行動を変える数字がここです。

令和6年中に受理した認知症に係る行方不明者のうち、死亡が確認されたのは491人でした。そのうち77.8%にあたる382人が、行方不明になった場所から5km圏内で見つかっています。1km以内だけで235人です。

1km以内
235人
1〜5km
147人
5〜10km
48人
10km超・距離不明
61人

認知症に係る行方不明者のうち死亡確認された491人の、発見場所までの距離(警察庁の統計より作成)

遠くへ行ってしまったと考えて広く探すより、まず半径5km、特に1km以内を丁寧に見るほうが、統計に沿っています。

見つかった場所は水辺と山林に集中している

さらに、死亡が確認された場所の内訳です。

場所人数
河川・河川敷115人
用水路・側溝79人
山林71人
田畑44人
路上37人
海・海岸31人
住宅等敷地内30人
屋内23人
池沼11人
湖・ダム6人

河川・河川敷、用水路・側溝、山林の3つで全体の54.0%を占めます。警察庁はこれらを「人的捜索が困難となる場合も多く、発見の遅延が生命に大きく影響する」場所として挙げています。

つまり探すべきなのは、駅や商店街よりも先に、家の近くの水辺です。用水路や側溝は、都市部でも住宅のすぐ脇にあります。

認知症の方がいなくなったときにやることの順番

1
すぐに警察へ届け出る
所在確認の大半が届出受理の当日です。数時間待つ判断は不利に働きます。「まだ様子を見よう」を挟まないでください。
2
家の中と敷地内を確認する
死亡確認場所には住宅等敷地内30人、屋内23人が含まれます。外に出たと決めつける前に、押し入れ・物置・浴室・車の中を確認します。
3
半径1kmの水辺から見る
用水路、側溝、川沿い。柵のない場所、暗い場所を優先します。
4
5km圏へ広げる
昔の職場、以前住んでいた家、よく行っていた店。本人の過去に関係する方向へ向かうことがあります。
5
GPS機器の位置情報を確認する
警察庁も、GPS機器等による位置情報の早期把握とドローンによる捜索が効果的だとしています。

探すときに手元にあると早いもの

  • 最近撮った顔がわかる写真(当日の服装がわかるものがあればなお良い)
  • 身長・体格・髪型・眼鏡の有無
  • いなくなった時刻と、その時に履いていた靴
  • 以前住んでいた住所、勤めていた場所
  • かかりつけの医療機関と服薬の内容

写真は「探すときに使う用」としてスマートフォンに1枚入れておくだけで、当日の動きが変わります。

認知症の徘徊に備えてできる準備

準備中身
GPS機器を持たせる靴に入れるタイプ、キーホルダー型など。警察庁も有効性を挙げています
衣類に連絡先を書く名前と電話番号を、本人が嫌がらない場所に
近所と情報を共有する顔を知っている人が多いほど早く見つかります
自治体の見守り登録多くの自治体に事前登録の制度があります
玄関の音が鳴るようにする夜間に出たことに気づけます

ただし、これらは出て行ったあとの対策です。出て行きたくなる状態そのものを軽くできる場合があります。

認知症で出て行こうとする背景には理由がある

認知症で外に出ようとする行動は、目的がないわけではありません。

  • 昔の家に帰ろうとしている
  • 仕事に行こうとしている
  • 探し物をしている
  • ここが自分の家だと認識できていない
  • 落ち着かない、じっとしていられない

このうち、落ち着かなさや不安、被害的な考えは、認知症の行動・心理症状(BPSD)として医療の対象になります。BPSDについてはBPSDとは何かで詳しく扱っています。

薬だけで解決するものではありませんが、環境の調整と合わせて、夜間の落ち着かなさが軽くなることがあります。とくに夜間に強く出る場合は、せん妄(急に頭が混乱し、時間や場所が分からなくなったり、見えないものが見えたりする状態)が混ざっていることもあります。この見分けは夜間せん妄と原因別のせん妄で扱っています。

家族だけで抱えると判断が遅れる

外出への警戒が続くと、家族が眠れなくなります。介護している側が消耗すると、対応の質も落ちます。

限界が近いと感じたときの整理は認知症の介護が限界だと感じたときにまとめています。

認知症の徘徊についてよくある質問

すぐ警察に届けるのは大げさではないですか

大げさではありません。所在確認の大半が届出受理の当日に集中しています。見つかったあとで取り下げることもできます。

どのあたりを探せばいいですか

まず家の中と敷地内、次に半径1km以内の水辺です。死亡が確認された491人のうち77.8%が5km圏内で、河川・用水路・山林が全体の54.0%を占めます。

GPSを持たせても外してしまいます

靴の中敷きに入れるタイプ、常に身につけている物に付けるタイプがあります。本人が意識しない形にするのが現実的です。

夜になると落ち着かなくなります

夜間に強く出る場合は、せん妄が関わっていることがあります。医療機関で相談する価値があります。

通院させるのが難しいのですが相談できますか

自宅に医師が伺う訪問診療という方法があります。ご本人が同席されない状態で、ご家族だけのご相談から始められます。

通院が難しいときは自宅での診療という方法があります

通院が難しいときは、ご自宅での精神科診療という方法があります

こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。

  • 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
  • ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
  • 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
  • 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます

お電話でのご相談 03-6689-8121

外出への警戒が続いている状況で、本人を医療機関へ連れて行くのは負担が大きい作業です。こころの訪問診療は、精神科医が自宅に伺って診察と薬の調整を行います。認知症も対応疾患に含まれます。

自宅での様子をそのまま医師に見てもらえるため、いつどんなときに落ち着かなくなるのかが伝わりやすくなります。介護保険の主治医意見書(要介護認定のときに主治医が書く書類)の作成にも対応しています。

まとめ

認知症またはその疑いによる行方不明は、令和6年に18,121人でした。所在確認の大半は届出受理の当日に集中しているため、届出をためらう時間が最も不利に働きます。

死亡が確認された491人のうち77.8%は行方不明になった場所から5km圏内で、1km以内だけで235人でした。発見場所は河川・河川敷、用水路・側溝、山林で全体の54.0%を占めます。遠くを探す前に、家の近くの水辺を見るほうが統計に沿っています。

GPS機器や見守り登録は出て行ったあとの備えです。落ち着かなさや不安そのものは医療で軽くできる場合があるため、夜間に強く出るときは相談する価値があります。

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