夜間せん妄と術後せん妄の違い 原因別に戻り方が変わります

夜間せん妄と術後せん妄の違い 原因別に戻り方が変わります

せん妄(急に頭が混乱し、時間や場所が分からなくなったり、見えないものが見えたりする状態)は原因によって、始まる時期も、戻るまでの時間も変わります。手術のあとに出るもの、夜になると出るもの、お酒をやめたあとに出るもの。同じ「混乱」に見えても中身が違います。

とくにアルコールをやめたあとに出るせん妄は、命に関わることがあります。ここだけは他と分けて扱う必要があります。

原因別に整理します。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。症状の受け止め方や必要な対応は一人ひとり異なります。気になる症状があるときは、かかりつけ医または精神科・心療内科にご相談ください。

せん妄は原因によって経過が変わる

せん妄は数時間から数日で急に、認知症は数か月から数年かけて変わることを比べた図

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種類始まる時期特徴戻り方
術後せん妄手術の当日〜数日後高齢者、長時間の手術、集中治療室で起こりやすい多くは数日で落ち着く
夜間せん妄夕方から夜にかけて昼間は落ち着いているのに夜になると混乱する原因が取れると戻ることが多い
薬剤性せん妄薬を始めた・増やした後睡眠薬、抗不安薬、複数の薬の組み合わせ薬の調整で戻ることがある
身体疾患によるもの感染や脱水などの発症後発熱、脱水、便秘、電解質の異常(血液中のナトリウムやカリウムなどの濃度が崩れた状態)が引き金原因が治ると戻ることが多い
アルコール離脱せん妄飲酒を中断して数日後震え、発汗、幻視。命に関わることがある医療機関での対応が必要
終末期せん妄全身状態が大きく低下した時期原因を取り除きにくい戻りにくいことがある

共通しているのは、急に始まり、1日のなかで変動し、意識がぼんやりするという点です。この3つが揃ったらせん妄を疑います。

認知症との見分け方はせん妄に家族ができることで扱っています。

夜間せん妄はなぜ夜に出るのか

夜になると混乱が強くなるのには、いくつかの理由が重なっています。

1
暗くて情報が減る
見えるものが減ると、状況を把握する手がかりがなくなります。影や物音を誤って受け取りやすくなります。
2
人がいなくなる
日中は家族やスタッフがいて会話がありますが、夜は一人になります。
3
体内のリズムが乱れている
日中に光を浴びていない、昼寝が長いと、夜の覚醒が不安定になります。
4
眠るための薬が影響する
眠らせようとして使った薬が、かえって混乱を強めることがあります。

つまり夜間せん妄は、夜という時間そのものより、夜に起きている条件が原因になっています。ここは家庭で変えられる部分があります。

今夜できること

できること中身
足元が見える明かりを残す真っ暗にしない。まぶしすぎない間接照明が向いています
時計とカレンダーを見える位置にいつ・どこにいるかの手がかりになります
日中に光を浴びる昼と夜の区別をつけます
昼寝を短くする夕方以降の長い昼寝は夜の混乱につながります
使い慣れた物を置く見慣れない環境は不安を強めます
眼鏡・補聴器を使う見えない・聞こえない状態は混乱を強めます
夕方以降のカフェインを控える覚醒を強めます

眠らせようとして市販の睡眠薬を足すのは避けてください。 薬が引き金になっている場合、状態を悪くします。

術後せん妄は手術前から予測できる

手術のあとに混乱が起きることは珍しくありません。高齢であること、もともと認知機能の低下があること、長時間の手術、集中治療室での管理などが起こりやすさに関わります。

多くは数日で落ち着きますが、その間の安全確保が重要になります。点滴やチューブを抜いてしまう、ベッドから降りようとして転倒する、といったことが起こり得ます。

手術前に、次のことを医療者に伝えておくと対応が変わります。

  • ふだんの物忘れの程度
  • 飲んでいる薬(睡眠薬・抗不安薬を含む)
  • 飲酒の習慣と量
  • 過去に入院時に混乱したことがあるか
  • 眼鏡や補聴器を使っているか

アルコール離脱せん妄だけは扱いが違う

飲酒を続けていた人が急にやめたあと、数日たってから震え、発汗、不眠、幻視が出ることがあります。これがアルコール離脱によるせん妄です。

この状態は命に関わることがあります。 けいれんを起こすこともあり、自宅で様子を見る対象ではありません。

次の場合はすぐに医療機関に連絡してください。

  • 手の震えが強い、全身が震える
  • 汗が大量に出る
  • 脈が速い、血圧が高い
  • 虫が見えるなど、はっきりした幻視がある
  • けいれんを起こした

入院や手術で急に飲酒が止まったあとに起こることもあります。飲酒の習慣は、必ず医療者に伝えてください。 量を少なく申告すると、対応が遅れます。

せん妄で家族が記録しておくこと

原因を絞るために、次の情報が役に立ちます。

記録する項目なぜ必要か
始まった日時急に始まったかを判断します
強く出る時間帯夜間に集中するかを見ます
直前に変わったこと薬、入院、転居、手術など
熱・便通・水分身体の引き金を探します
飲んでいる薬増えた薬がないかを見ます
飲酒の習慣離脱の可能性を判断します

スマートフォンのメモに時刻と様子を書くだけで十分です。この記録があるかどうかで、原因にたどり着く速さが変わります。

せん妄を繰り返す場合は原因が残っている

一度落ち着いても、また出ることがあります。その場合、引き金が取り除かれていない可能性があります。

  • 脱水が続いている
  • 便秘が慢性化している
  • 薬の組み合わせが変わっていない
  • 昼夜のリズムが戻っていない
  • もともと認知症があり、せん妄が起きやすい状態にある

認知症がある方は、せん妄が起きやすい状態にあります。認知症の行動・心理症状との違いは認知症の行動・心理症状(BPSD)とは何かで扱っています。

家族の対応はせん妄に家族ができること、認知症の症状との区別はBPSDとは何かで扱っています。

介護が限界に近い場合は認知症の介護が限界だと感じたときを確認してください。

せん妄を医療機関のほかに相談できる先

医療機関に行く前でも、相談できる窓口があります。

相談先対象と内容
地域包括支援センター高齢者全般。認知症の相談、介護保険の申請
精神保健福祉センター各都道府県・政令市に設置。精神保健の相談
保健所精神保健の相談、訪問相談
ケアマネジャー介護保険を使っている場合
家族会同じ立場の人と話せる場
かかりつけ医紹介や助言

高齢の方については地域包括支援センター、それ以外は保健所や精神保健福祉センターが入口になります。「どこに相談していいか分からない」という状態のまま時間が過ぎるのが、いちばん避けたい形です。

夜間せん妄と原因別のせん妄についてよくある質問

夜だけ混乱するのはせん妄ですか

夕方から夜にかけて強くなるのはせん妄の典型的な特徴です。ただし認知症でも夕方以降に落ち着かなくなることがあるため、急に始まったかどうかを合わせて見ます。

術後せん妄はどのくらいで戻りますか

多くは数日で落ち着きます。長引く場合は、他の原因(感染、脱水、薬)が加わっていないかを確認します。

眠れないので市販の睡眠薬を使ってもいいですか

避けてください。薬が引き金になっている場合、状態を悪くします。必ず医師に相談してください。

お酒をやめたあとの震えは放っておいて大丈夫ですか

大丈夫ではありません。アルコール離脱によるせん妄は命に関わることがあります。すぐに医療機関へ連絡してください。

何度も繰り返します

引き金が残っている可能性があります。脱水、便秘、薬の組み合わせ、昼夜のリズムを順に確認してください。

夜間の急な変化にも電話で相談できます

通院が難しいときは、ご自宅での精神科診療という方法があります

こころの訪問診療 byミライメディカルクリニックは、世田谷区を中心に三軒茶屋駅から半径16km圏へ精神科医が伺う訪問診療です。うつ病・統合失調症・双極性障害・認知症・不安障害などに対応し、基本は月2回の定期訪問。ご契約中の方には緊急連絡先をご案内し、24時間お電話でご相談いただけます。

  • 診療情報提供書はなくてもご相談いただけます
  • ご本人が同席されなくても、ご家族だけでのご相談から始められます
  • 自立支援医療をご利用の場合、自己負担は月2,500円〜が目安です
  • 自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金などの診断書も作成できます

お電話でのご相談 03-6689-8121

せん妄は夜に強く出ることが多く、そのたびに救急へ行くのは現実的ではありません。こころの訪問診療では、ご契約中の患者さまに緊急連絡先をご案内しており、夜間・休日の急な変化についても24時間お電話でご相談いただけます。

基本は月2回の定期訪問で、自宅での様子を続けて見ていきます。認知症も対応疾患に含まれ、必要に応じて血液検査を自宅で行うこともできます。

まとめ

せん妄は原因によって経過が変わります。術後せん妄は多くが数日で落ち着き、夜間せん妄は環境の条件が関わるため家庭で変えられる部分があります。薬剤性や身体疾患によるものは、原因が取れると戻ることが多い状態です。

夜間せん妄への対応は、足元が見える明かりを残す、時計とカレンダーを置く、日中に光を浴びる、昼寝を短くする、眼鏡と補聴器を使うことです。眠らせようとして市販の睡眠薬を足すのは避けてください。

アルコール離脱せん妄だけは扱いが違います。震え、発汗、幻視、けいれんは命に関わるため、すぐに医療機関へ連絡してください。飲酒の習慣は必ず医療者に伝えてください。

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