デートDVという言葉をご存知でしょうか。DVと聞くと身体的な暴力などの深刻な攻撃を想像してしまいがちですが、精神的な暴力、経済的な支配、性的な強要、さらにはSNSを使った監視なども該当します。
本記事では、デートDVの具体的な種類や兆候、その対処法について詳しく解説していきます。「自分が被害を受けているかもしれない」と自覚することが問題解決の第一歩となります。パートナーとの関係性に違和感を持っているのであれば、心当たりがないか確認してみてください。

デートDVとは?健全な恋愛との違いを知る
デートDVとは、恋人同士の間で起こる暴力のことです。暴力と言っても、身体的な「殴る、蹴る」などの暴力だけを指すわけではありません。暴言や無視、行動の制限、携帯電話のチェックなど、精神的な暴力も含まれます。
また、性的な行為を強要したり、避妊に協力しなかったりすることも、デートDVに該当します。さらに、お金の使い道を細かく制限したり、アルバイトを辞めさせたりする経済的な支配も、デートDVの特徴です。

(内閣府「令和5年度調査|男女間における暴力に関する調査」を参考に編集部作成)
内閣府男女共同参画局が令和5年におこなった調査によると、交際経験がある人の18.0%。性別でみると女性の22.7%、男性の12.0%は交際相手から被害を受けたことが「ある」と回答しました。デートDVは決して他人事ではなく、いつ自分が被害を受けてもおかしくないのです。
しかし交際中は客観的な判断が難しいため、被害に気づけないことも少なくありません。明確な違いとして、健全な恋愛は、お互いを尊重し、支え合う関係なのに対し、デートDVは、一方が他方を支配し、コントロールしようとする関係です。
参考:内閣府「男女共同参画局|デートDVって?」
デートDVの主な種類と具体例
デートDVは、身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力、経済的な暴力、性的な暴力、デジタルな暴力など、様々な形で現れます。
これらの行為は、単独で起こることもあれば、複数組み合わさって起こることもあります。もし、あなたがデートDVを受けていると感じたら、一人で抱え込まず、信頼できる人に相談したり、専門機関に助けを求めたりしてください。
身体的暴力(暴力・脅し)
身体的暴力は、最も分かりやすいデートDVの形です。殴る、蹴るといった直接的な暴力だけでなく、髪を引っ張る、壁に押し付ける、物を投げつけるなども含まれます。また、「別れ話をしたら殺す」などと脅迫することも、身体的暴力に該当します。
精神的暴力(束縛・無視・脅迫)
精神的暴力は、目に見えにくいため、被害者がDVだと気付かないケースも多いです。常に連絡を強要したり、友人や家族との付き合いを制限したりするなど、相手の行動を束縛することが挙げられます。
また、無視したり、暴言を吐いたり、過去の恋愛について責め立てたりすることも精神的暴力です。さらに、自殺をほのめかして相手を脅す行為も含まれます。
経済的暴力(お金を管理・搾取)
経済的暴力は、金銭面で相手を支配する行為です。デート代を常に負担させたり、アルバイトを辞めさせたり、お金を貸して返済を迫ったりするなどが挙げられます。また、無断でクレジットカードを使ったり、生活費を渡さなかったりするのも経済的暴力です。
性的暴力(強要・避妊の拒否)
性的暴力は、性的な行為を強要したり、避妊に協力しなかったりする行為です。望まない性行為を強要するだけでなく、中絶を強要したり、性的な写真や動画を撮影することも含まれます。
デジタルDV(SNS監視・スマホチェック)
デジタルDVは、近年増加傾向にあるデートDVの形です。SNSのアカウントを監視したり、スマホのメールや通話履歴をチェックしたりする行為が挙げられます。また、位置情報を常に確認したり、勝手にSNSに投稿したりすることも含まれます。
デートDVのサイン3つ
デートDVは、初期の段階では気付きにくいことも多いですが、いくつか共通する兆候があります。もし、あなたがこれらの兆候に気付き、不安を感じたら信頼できる人に相談したり、専門機関に助けを求めたりしてください。
デートDVのサイン1|過度な監視と束縛
「好きだから」「心配だから」という言葉で、常に相手の行動を監視したり、束縛したりすることは、デートDVの兆候の一つです。
例えば、どこに行くにも報告を強要したり、友人や家族との付き合いを制限したりする行為が挙げられます。また、携帯電話やSNSをチェックしたり、服装や髪型にまで口出しするのも、過度な監視と束縛と言えるでしょう。
デートDVのサイン2|人格を否定する言動
相手の人格を否定するような言動も、デートDVの兆候です。容姿や能力をけなしたり、過去の恋愛や失敗を責め立てたりする行為は、相手の自尊心を傷つけ、精神的に追い詰める可能性があります。
「お前はダメなやつだ」「俺がいなければ何もできない」などといった言葉で、相手をコントロールしようとするケースも少なくありません。
デートDVのサイン3|感情の極端な変化
感情の起伏が激しく、些細なことで怒り出したり、機嫌が悪くなったりするのも、デートDVの兆候の一つです。優しい時と冷たい時の差が激しく、相手を不安にさせることがあります。
また、自分の思い通りにならないと暴言を吐いたり、物を壊したりするなど、攻撃的な行動に出るケースもあります。
デートDVの心理と加害者の特徴
デートDVの加害者は、なぜ暴力を振るうのでしょうか?その背景には、様々な心理的要因や特徴が考えられます。
なぜデートDVをするのか?加害者の心理分析
加害者の心理背景には、強い支配欲求や自己愛が潜んでいるケースが多いです。相手を自分の思い通りにコントロールしたい、自分が一番大切で、相手の気持ちは二の次という考え方です。また、自分に自信がなく、相手を支配することで優位に立ちたいという劣等感や、相手が自分以外の人と関わることに対する強い嫉妬心も、DVの引き金になることがあります。
さらに、仕事や家庭でストレスを抱えている場合、その捌け口としてDVを行うケースも考えられます。DVは決して許される行為ではありませんが、加害者自身も何らかの問題を抱えている可能性があるのです。
被害者が逃げられなくなる理由
DV被害者は、なぜ加害者から逃げられないのでしょうか?それは、恐怖心や愛情、経済的な依存、孤立、自責感など、様々な要因が複雑に絡み合っているからです。
暴力や脅迫によって恐怖心を植え付けられている場合、逃げ出すことに大きな抵抗を感じます。また、加害者のことを愛しており、いつか変わってくれると期待しているケースも多いです。加害者に経済的に依存していたり、友人や家族との関係を断たれて孤立していたりする場合は、逃げ出すための選択肢が限られてしまいます。
さらに、「自分が悪いからDVを受けている」と思い込み、自責感に苛まれる被害者もいます。このような心理状態では、DVから抜け出すことが非常に難しくなります。
DVがエスカレートするサイクル
DVは、緊張状態、爆発、ハネムーン期というサイクルを繰り返しながら、徐々にエスカレートしていく傾向があります。
些細なことでイライラし、被害者に暴言を吐いたり、威圧的な態度をとったりする緊張状態から始まり、それが限界に達すると暴力や暴言を爆発させます。その後、加害者は反省し、謝罪したり、プレゼントを贈ったりするハネムーン期に入ります。
被害者は、加害者が変わってくれると期待しますが、根本的な解決には至らず、再び緊張状態に戻ってしまうのです。このサイクルを繰り返すうちに、DVは深刻化し、被害者の心身に大きな傷を残すことになります。
デートDVの対処法
デートDVを受けていると気づいたら、どうすれば良いのでしょうか?一人で抱え込み、状況が悪化してしまう前に、適切な対処法を知っておくことが大切です。
対処法1|専門機関に相談する

デートDVで悩んでいるときは、専門機関に相談することが解決への第一歩となります。
どこに相談すれば分からないという場合でも、適切な相談口を案内してくれますので、まずは内閣府が設置しているDV相談ナビの「#8008」へ電話してみてください。また、電話に不安がある場合はメールやチャットでの相談が可能な「DV相談+」の利用を検討してみてください。
さらに、弁護士に相談することで、DVに関する法的なアドバイスを受けたり、加害者との交渉を依頼したりすることも可能です。
専門機関に相談することで、あなたの状況に合わせて、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。一人で悩まず、まずは相談してみましょう。
対処法2|物理的な距離を確保する
加害者から身を守るためには、物理的な距離を確保することが重要です。可能であれば、加害者と別居し、安全な場所に身を移しましょう。
頼れる人がいれば、一時的に実家や友人宅に避難させてもらうのも良いでしょう。また、DV被害者向けのシェルターを利用するという方法もあります。
シェルターでは、安全な場所で生活できるだけでなく、他の被害者と交流したり、カウンセリングを受けたりすることができます。まずは、自分の身の安全を確保することを最優先に考えましょう。
対処法3|身体的暴力や避妊なしの性行為がある場合は病院へ
もし、デートDVで身体的な暴力を受けたり、避妊なしに性行為を強要されたりした場合、すぐに病院を受診しましょう。
病院では、怪我の状態を診察し、適切な治療を受けることができます。医師の診断書は、デートDVの被害を証明する重要な証拠です。警察に被害届を出す際や、裁判で争う際に必要となる場合もあるので、今は訴える気がないとしても、きちんと受診しておくとよいでしょう。
また、避妊なしの性行為があった場合、望まない妊娠のリスクや性感染症に感染している可能性があります。病院で検査を受けたり、緊急避妊薬の処方も可能です。
まとめ
デートDVとは、恋人同士の間で起こる暴力や支配的な行動のことです。身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力、経済的な暴力、性的な暴力など、様々な形態があります。
デートDVのサインとしては、束縛や干渉、暴言、脅迫、無視などがあります。これらのサインに気づいたら、早めに相談することが大切です。
デートDVの被害に遭っている場合は、一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談したり、専門機関に助けを求めたりしましょう。警察や相談窓口に連絡することで、適切なサポートを受けることができます。
デートDVは決して許される行為ではありません。もし、あなたがデートDVの被害に遭っている、または身近に悩んでいる人がいる場合は、勇気を出して相談してください。