ピルをやめたあと、排卵は多くの方で1〜3か月以内に戻ります。最短では、やめた次の周期に排卵が起こることもあります。そしてやめた直後に妊娠した場合でも、赤ちゃんへの影響を心配する必要はありません。これはMSDマニュアルにも明記されている内容です。
この記事では、排卵が戻るまでの期間、中止直後の妊娠と胎児への影響、そして「ピルをやめると妊娠しやすい」と言われる話の実際をまとめます。
東京慈恵会医科大学医学部卒業。現在は板橋中央総合病院の産婦人科医長として、妊婦健診や分娩管理、新生児対応をはじめ、切迫流産・早産の管理などにも従事。婦人科領域では、子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症・骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌・卵巣癌に対する手術および化学療法(抗がん剤治療)まで幅広く対応。さらに、PMS(月経前症候群)や更年期障害など、ホルモンバランスに関連する女性特有の不調についても積極的に診療している。日本産科婦人科学会専門医として、日々多くの女性の健康課題に向き合い、臨床の第一線で診療を続けている。
目次
ピルやめてから妊娠できる状態に戻るまでは多くの場合2〜3か月以内
ピルは排卵を止めることで避妊や治療の効果を出しています。飲むのをやめると、脳から卵巣への指令が再び働き始め、排卵が戻ります。
| 時期 | 体に起こること |
|---|---|
| やめて2〜4日 | ホルモンが下がり、消退出血(ピルをやめてから数日後に起こる、生理に相当する出血)が起こる |
| やめて1か月以内 | 次の周期に排卵が起こることがある。最短のケース |
| やめて2〜3か月 | この期間は排卵が起きないこともある。多くはこの間に戻る |
| やめて3か月以降 | 生理が来ない状態が続く場合は受診の目安 |
MSDマニュアルは「服用を中止してから2〜3カ月は排卵が起きない場合もありますが、経口避妊薬が妊よう性(妊娠しやすさ)に長期的な影響を及ぼすことはありません」と記載しています。ピルを長く飲んでいたから妊娠しにくくなる、ということはありません。
注意したいのは、排卵は生理より先に起こるという点です。「まだ生理が来ていないから妊娠しない」と考えていると、最初の排卵で妊娠することがあります。妊娠を望まない期間は、やめた直後から別の避妊方法を使ってください。
ピルやめてから妊娠してもすぐなら胎児への影響を示すデータはない
「ピルをやめてすぐ妊娠したが、赤ちゃんに影響はないか」「飲んでいる途中で妊娠に気づいたが大丈夫か」という不安は、この話題でもっとも多く検索されているものです。
MSDマニュアルは、この点について次のように記載しています。
| 胎児への影響について | 妊娠の初期に服用した経口避妊薬が胎児に害を及ぼすことはありませんが、妊娠に気づいたらすぐ服用を中止するようにします |
やめた直後の妊娠はもちろん、気づかずに飲み続けていた場合についても、先天異常が増えるという結果は示されていません。
やるべきことは1つだけです。妊娠に気づいた時点でピルの服用をやめ、産婦人科を受診してください。「飲んでいたことを言いにくい」と黙ってしまう方がいますが、伝えても責められることはなく、むしろ経過の説明がしやすくなります。
ピルやめてから妊娠しやすくなるという話の実際
「ピルをやめた直後は妊娠しやすい」という説明を見かけますが、これは確立した事実ではありません。実際に起きているのは、次のようなことです。
- ピルを飲んでいる間は排卵が止まっていたため、妊娠する可能性がほぼゼロだった
- やめると排卵が戻り、妊娠しうる状態に戻る
- ピルをやめる方の多くは妊娠を望んでいるため、やめた直後から妊娠を目指す
つまり「ゼロだったものが通常に戻った」という変化を、妊娠しやすくなったと感じているという説明のほうが実態に近いものです。特別に妊娠しやすい期間があると考えて計画を立てるのは、あまり当てになりません。
一方で、ピルを飲んでいたこと自体が将来の妊娠に不利に働くこともありません。子宮体がんや卵巣がんのリスクを下げる働きが知られているなど、長期的には利点も報告されています。
やめると生理痛もニキビも飲む前の状態に戻る
ピルで抑えられていた症状は、やめると元に戻ります。これは副作用ではなく、飲む前の状態に戻っているということです。
| 戻ってくること | 時期の目安 |
|---|---|
| 生理痛、経血量が飲む前の状態に戻る | 周期が戻ってから徐々に |
| 生理前のイライラや落ち込みが戻る | 数周期のうちに |
| ニキビや肌荒れが戻る | 1〜3か月 |
| 周期が不規則になる | もともと不順だった方は戻りやすい |
もともと生理痛が重くてピルを飲んでいた方は、やめると痛みが戻ります。妊娠を目指す期間はそれを受け入れることになりますが、痛みで日常生活が回らない場合は、鎮痛薬の使い方を含めて相談してください。
やめる前にしておくと妊活が進めやすくなること
- 葉酸を摂り始める。妊娠のごく初期に必要になるため、妊娠が分かってからでは間に合わない部分があります。やめる前から始めておくのが確実です
- 風疹の抗体があるか確認する。抗体がない場合、妊娠前にワクチンを受けておく必要があります。接種後は一定期間避妊が必要になるため、逆算が要ります
- 基礎体温をつけ始める。排卵が戻ったかどうかの手がかりになります
- やめることを主治医に伝える。治療目的で飲んでいた場合、やめたあとの症状への備えを相談できます
順番としては、風疹の抗体確認と葉酸を先に始め、そのうえでピルをやめる形がもっとも無駄がありません。
準備は風疹ワクチンから葉酸、ピル中止の順に3〜4か月かける
準備には順番があります。とくに風疹のワクチンは、接種後に一定期間の避妊が必要になるため、先にやめてしまうと段取りが崩れます。
| 時期 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| やめる3〜4か月前 | 風疹の抗体を調べ、必要ならワクチンを受ける | 接種後は一定期間の避妊が必要になるため |
| やめる1〜3か月前 | 葉酸を摂り始める | 妊娠のごく初期に必要になり、分かってからでは間に合わない |
| やめる1か月前 | 主治医にやめる意向を伝える | 治療目的なら、やめたあとの症状への備えを相談できる |
| やめる時 | シートを飲み切ってからやめる | 周期の区切りが分かりやすくなる |
| やめた直後から | 基礎体温をつける | 排卵が戻ったかの手がかりになる |
妊娠を望まない期間があるなら、やめた直後から別の避妊方法が必要です。排卵は生理より先に起こるため、「まだ生理が来ていないから」は理由になりません。
受診の目安は35歳未満で1年、35歳以上で半年
やめてすぐ妊娠する方もいれば、時間がかかる方もいます。どの時点で相談すればよいかの目安を示します。
- やめて3か月たっても生理が来ない。妊娠していないことを確認したうえで受診してください
- 生理は来るが基礎体温が二相にならない。排卵が起きていない可能性があります
- 35歳未満で1年、35歳以上で半年妊娠しない。この期間が一般的な受診の目安とされています
- もともと生理不順だった。ピルで整っていた状態が終わっただけの可能性もありますが、早めに調べておくほうが時間を無駄にしません
「ピルを飲んでいたせいで妊娠しにくいのでは」と考えて受診をためらう方がいますが、ピルの服用が妊よう性(妊娠しやすさ)に長期的な影響を及ぼすことはないとされています。原因が別にある可能性を早く調べたほうが、結果的に近道になります。
やめたあと生理が来ない原因は妊娠か、周期が戻っていないかのどちらか
| 考えられること | 確認方法 |
|---|---|
| 妊娠している | 性行為があったなら、まず妊娠検査薬で確認する |
| 周期がまだ戻っていない | 2〜3か月は起こりうる範囲。基礎体温で排卵の有無を見る |
| もともと生理不順だった | ピルで整っていた状態が終わり、元に戻った可能性 |
| 婦人科系の病気が隠れている | 3か月以上来ない場合は受診して調べる |
目安として、やめてから3か月たっても生理が来ない場合は受診してください。妊娠していないことが確認できているなら、ホルモンの状態を調べたうえで対応を決めます。妊娠を望んでいる場合は、待つ時間そのものが惜しいため、早めに動いたほうが得です。
ピルやめてから妊娠することについてよくある質問
ピルやめてから妊娠できるまでどれくらいかかりますか
最短ではやめた次の周期です。2〜3か月は排卵が起きないこともありますが、多くはその間に戻ります。長く飲んでいたことが妊娠しにくさにつながることはありません。
やめてすぐに妊娠するのはよくないのでしょうか
問題ありません。何周期か待たなければいけないという決まりはありません。妊娠に気づいた時点でピルをやめ、受診してください。
ピルを飲んでいる途中で妊娠に気づきました
すぐに服用をやめて産婦人科を受診してください。妊娠初期に飲んでいた経口避妊薬が胎児に害を及ぼすことはないとされています。診察のときは、いつまで飲んでいたかを伝えてください。
ピルをやめると双子ができやすくなりますか
そうした説がありますが、確立した事実ではありません。計画の前提にできる話ではありません。
やめるのは飲み終わってからのほうがよいですか
シートを飲み切ってからやめるほうが、周期の区切りが分かりやすくなります。ただし途中でやめても問題はありません。その場合は数日で出血が起こります。
やめる理由が「なんとなく不安」なら続けたほうが得なこともある
妊娠を望むならやめる必要がありますが、「そろそろやめたほうがいいのでは」という漠然とした理由でやめるのは、いったん立ち止まる価値があります。
| やめる理由として妥当 | いったん相談したほうがよい理由 |
|---|---|
| 妊娠を望んでいる | 長く飲んでいるのが不安だから |
| 副作用がつらく、別の薬に替えたい | 体に悪い気がするから |
| 使えない条件に当てはまるようになった | 費用を抑えたいから |
| 医師からやめるよう言われた | 周りがやめているから |
右側の理由でやめると、生理痛や過多月経といった、ピルで抑えられていた症状が戻ります。副作用がつらいなら別の薬に替えるという方法があり、費用が理由なら治療目的として保険が使えるかを確認する方法があります。やめる以外の解決策があることも多いため、まず相談してみてください。
また、長期の視点では、経口避妊薬に子宮体がんや卵巣がんの危険を下げる働きがあることが知られています。MSDマニュアルは、使用を中止してから少なくとも20年間その効果が続くと記載しています。「長く飲んでいるのが不安」という理由だけでやめる判断は、その面では損になることもあります。
まとめ
ピルをやめてから排卵が戻るまでは、多くの場合2〜3か月以内です。最短では次の周期に排卵が起こるため、妊娠を望まない期間はやめた直後から別の避妊方法が必要です。
中止直後に妊娠した場合も、気づかずに飲み続けていた場合も、胎児に害を及ぼすことはないとされています。気づいた時点でやめて受診する。それだけで十分です。3か月たっても生理が来ないときは、妊娠の有無を確認したうえで婦人科に相談してください。
参考文献
- MSDマニュアル家庭版「ホルモン剤による避妊法」
- MSDマニュアル家庭版「避妊の概要」
