ゴムが中に残ったときの取り方と、自分で取れないときに婦人科で行うこと

コンドームが腟内に残ってしまったとき、まずお伝えしたいのは命に関わるような緊急事態ではないということです。落ち着いて姿勢を作れば、自分で取り出せることがほとんどです。ただし、そのまま放置してよいものではありません。

この記事では、自分で取り出す手順、やってはいけないこと、自分で取れないときに婦人科で何が行われるのか、そして射精していた場合の妊娠の判断までをまとめます。

医師 阿部一也
当記事の監修医師
医師:阿部 一也
東京慈恵会医科大学医学部卒業。現在は板橋中央総合病院の産婦人科医長として、妊婦健診や分娩管理、新生児対応をはじめ、切迫流産・早産の管理などにも従事。婦人科領域では、子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症・骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌・卵巣癌に対する手術および化学療法(抗がん剤治療)まで幅広く対応。さらに、PMS(月経前症候群)や更年期障害など、ホルモンバランスに関連する女性特有の不調についても積極的に診療している。日本産科婦人科学会専門医として、日々多くの女性の健康課題に向き合い、臨床の第一線で診療を続けている。

ゴムが中に残ったときの取り方は、しゃがんでいきみながら指でつまむ

腟は袋状で、奥は子宮頸部でふさがれています。コンドームがおなかの中まで入ってしまうことはありません。必ず手の届く範囲にあります。

  1. 手を石けんで洗い、爪が長ければ短く整える。爪で腟の壁を傷つけないためです
  2. しゃがむ姿勢をとる。和式トイレに座る形か、片足を便座や浴槽のふちに乗せる姿勢にします。立ったままより腟の入口が下がり、手が届きやすくなります
  3. 排便のときのように軽くいきむ。腹圧をかけると、奥にあるものが入口側へ押し出されます
  4. 人差し指と中指の2本を入れ、内側の壁に沿ってぐるりとなぞる。ゴムは丸まっていることが多く、壁のくぼみに引っかかっています
  5. 指先ではさんでゆっくり引き出す。滑って取れないときは、いきむタイミングに合わせて引きます

力が入って腟がしまっていると探しにくくなります。うまくいかないときは、いったん手を抜いて深呼吸をしてから、もう一度やってみてください。お風呂の中や、シャワーを浴びたあとのほうがやりやすいという方もいます。

ゴムが中に残ったときにやってはいけない4つのこと

やってはいけないこと理由
ピンセットや箸などの道具を使う腟の壁を傷つけて出血や感染の原因になります。見えない場所で道具を操作するのは危険です
シャワーや洗浄器で腟の中を洗うゴムを奥へ押し込むことがあります。腟内の常在菌のバランスも崩れます
強くいきみ続ける短時間なら有効ですが、長く続けると痔や出血につながります
そのまま放置して様子を見る感染やにおいの原因になります。忘れて数日たつケースが実際にあります

とくに「自然に出てくるだろう」と考えて放置するのは避けてください。出てくることもありますが、確認できないまま日数が過ぎるのがいちばん困る状態です。

自分で取れないときに婦人科で行うことは数分で終わる

受診をためらう理由の多くは「何をされるか分からない」ことです。実際の流れは次のとおりです。

  1. 問診で、いつのことか、射精があったかを確認します
  2. 内診台で、腟鏡(クスコ)という器具を入れて中を確認します。子宮がん検診と同じ器具です
  3. 見えている位置から、専用の鉗子でつまんで取り出します
  4. 必要に応じて、傷や炎症がないかを確認します

処置そのものは数分で終わり、麻酔は必要ありません。多少の圧迫感はありますが、痛みで動けなくなるような処置ではありません。予約なしで当日受け付けている婦人科も多く、緊急ではないものの、その日か翌日のうちに受診するのが望ましい状態です。

受診先は婦人科または産婦人科です。恥ずかしさを感じる方が多い相談ですが、医療機関にとっては珍しいことではありません。むしろ、言い出せずに日数が経ってしまうほうが治療の手間が増えます。

ゴムが中に残った状態ですぐ受診すべき症状

  • 強い痛みや、続く出血がある
  • 発熱がある
  • 悪臭のあるおりものが出てきた
  • 取り出したが、ちぎれて一部が残っている可能性がある

ゴムが中に残ったまま放置すると起こるのはにおいと感染

腟内に異物が残ったままになると、細菌が増えて次のような症状が出てきます。

  • 悪臭のあるおりもの。数日で出てくることが多く、最初に気づくきっかけになります
  • おりものの色の変化。黄色や灰色、緑がかった色になることがあります
  • 不正出血、かゆみ、痛み
  • 骨盤内への感染の広がり。発熱や下腹部痛を伴います

頻度は非常に低いものの、腟内に異物が長期間とどまった場合に、発熱や発疹を伴う重い全身症状が起こることが知られています。高熱や広い範囲の発疹が出た場合は、時間帯を問わず受診してください。

射精していたなら妊娠の判断を並行して進める

取り出すことと、妊娠を防ぐことは別の問題です。ゴムが外れて中に残っていたということは、その時点で避妊できていなかった可能性があります。

状況妊娠の可能性の考え方
射精後に外れて残った精液が腟内に出ている可能性が高く、避妊できていなかったものとして扱う
射精前に外れたことに気づいた射精前の液にも精子が混じることがあるため、可能性はゼロではない
外れた時点が分からない射精後として扱い、時間を優先して判断する

緊急避妊薬(アフターピル)は性交後72時間以内の服用が国内での用法で、早く飲むほど妊娠を防げる可能性が高くなります。日本産科婦人科学会も、性交後できるだけ速やかに服用することを示しています。取り出しに手間取っている間にも時間は進むため、「取れたら考える」ではなく並行して判断してください

なお、腟の中を洗っても妊娠は防げません。精子は数分で子宮頸管へ入るため、洗浄が間に合う場面ではないためです。

取り出したあとに確認しておくこと

取り出せたら終わり、ではありません。次の3点だけ確認してください。

  1. 形が欠けていないか広げて見る。ちぎれていた場合、一部が腟内に残っている可能性があります。破片が残ると、においや炎症の原因になります
  2. 数日はおりものの変化に注意する。においが強くなる、色が変わる、量が増えるといった変化が出たら受診してください
  3. 射精があったなら、時間を優先して判断する。取り出せたことと避妊できたことは別です

形が欠けていたかどうか分からない、そもそも全部出たか自信がないという場合は、それ自体が受診の理由になります。確認のためだけの受診でも問題ありません。

相手の感染状況が分からないときは検査も考える

コンドームが外れていたということは、その時点で性感染症を防ぐ機能も失われていたことになります。性感染症の多くは自覚症状が出ないまま進むため、症状がないことは大丈夫の根拠になりません。

感染症検査できるようになる時期の目安
クラミジア、淋菌行為から2〜3週間後
梅毒行為から4〜6週間後
HIV行為から4〜12週間後(検査方法による)

クラミジアは女性では自覚症状が出ないことが多く、放置すると卵管に炎症が及ぶことがあります。相手の状況が分からない行為があったなら、妊娠の心配とは別に、時期を見て検査を考えてください。

コンドームが中に残る原因はサイズと抜くタイミング

  • サイズが大きすぎる。もっとも多い原因です。締めつけが弱く、動きの途中でずれます
  • 射精後に抜くのが遅れた。勃起がおさまると根元にすき間ができ、抜くときにゴムだけが残ります
  • 潤滑が足りず摩擦が強い。ゴムが引っぱられてずれます
  • 行為が長時間に及んだ。途中で位置がずれても気づきにくくなります
  • 根元まで下ろしていなかった。装着が浅いと外れやすくなります

「何度も外れる」という場合は、たいていサイズが合っていません。国内の製品は装着時の直径で分かれているため、ひとつ小さいものを試してみてください。防ぎ方の詳細はゴムありでも妊娠する原因と正しい使い方にまとめています。

ゴムが中に残るのを次から防ぐ手順

原因の裏返しが、そのまま予防策になります。とくに効くのは最後の抜き方です。

  1. サイズを合わせる。外れた経験があるなら、まずひとつ小さいものを試します。装着時の直径で選びます
  2. 根元まで下ろす。途中で止めると、動いているうちに上がってきます
  3. 先端の空気を抜く。抜いておかないと圧力の逃げ場がなく、破れる原因にもなります
  4. 行為中に一度確認する。位置がずれていないかを触って確かめます
  5. 射精後は根元を押さえたまま、勃起が続いているうちに抜く。ここが最大の分かれ目です。おさまってから抜くとすき間ができ、ゴムだけが残ります
  6. 潤滑が足りないときは水性の潤滑剤を足す。摩擦が強いとずれやすくなります。油性のものはラテックスを傷めます

5番は男性側の動作なので、女性からは制御できません。何度も同じことが起きているなら、その場ではなく落ち着いているときに共有しておくと変わります。言いにくい話ですが、繰り返し起きるほうが負担は大きくなります。

毎回この心配をするならピルの併用を考える

コンドームが外れる、中に残るという出来事は、そのたびに72時間の判断を迫られます。回数が重なるなら、コンドームだけに頼る形をやめるほうが負担が減ります。

低用量ピルを併用すると、コンドームが外れた回でも妊娠を防ぐ働きが残ります。そのうえでコンドームを使い続けることで、性感染症を防ぐ機能も維持できます。どちらか一方に替えるのではなく、二重にするという考え方です。生理痛や生理不順が軽くなるという別の利点もあります。

ゴムが中に残った場合についてよくある質問

ゴムが中に残っても自然に取れることはありますか

動いているうちに出てくることはあります。ただし出てきたかどうかを確認できないまま日数が過ぎるのが問題です。自然に出るのを待つのではなく、確認してください。

ゴムが中で外れた場合、洗えば妊娠は防げますか

防げません。精子は短時間で子宮頸管へ入るため、洗浄は間に合いません。腟内を洗うことは常在菌のバランスを崩す点でもすすめられません。

残ったゴムがおなかの中まで入ることはありますか

ありません。腟の奥は子宮頸部でふさがれており、コンドームが通れる隙間はありません。必ず腟の中にとどまっています。

取り出したあとに違和感が残るのは危険ですか

指を入れた刺激で一時的に違和感が残ることはあります。ただし、痛みが続く、出血がある、においのあるおりものが出るという場合は受診してください。ちぎれて一部が残っている可能性もあります。

パートナーに言えないのですが受診は必要ですか

受診にパートナーの同意は必要ありません。自分で取り出せていない、あるいは確認できていないのであれば、ひとりで受診して問題ありません。

まとめ

ゴムが中に残っても、おなかの奥まで入ることはありません。手を洗い、しゃがんでいきみながら指2本で内側の壁をなぞれば、多くの場合は自分で取り出せます。道具を使うこと、腟内を洗うこと、放置することは避けてください。

自分で取れないときの婦人科での処置は、器具で確認して鉗子で取り出すだけの数分で終わるものです。ためらう理由にはなりません。そして射精があった場合は、取り出しと並行して72時間以内の判断を進めてください。

参考文献

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