妊娠初期、多くの妊婦さんを悩ませるつわり。吐き気や嘔吐、食欲不振、異常な眠気など、その症状は人によって様々です。症状には個人差があり、まったくない人もいれば、激しい症状に悩まされる人もいます。
この記事では、つわりの基本的な知識から、症状別の具体的な対策、医療機関を受診すべき目安まで、詳しく解説していきます。つわりは必ず終わりが来る一時的な症状です。妊婦さんご自身とお腹の赤ちゃんのために、無理のない範囲で対策を実践していきましょう。

目次
つわりとは?種類別の症状と対策法
つわりは、妊娠に伴う吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状を指します。妊娠初期に多くみられますが、時期や症状の重さには個人差があります。つわりがひどい人もいれば、つわりが軽かったり、ある日とない日の波があるといった人もいます。
つわりが全くないと流産の心配があるのではと不安に思う方もいらっしゃいますが、直接的な因果関係はありません。

(PRTIMES「ルナルナ|“つわり”について」を参考に編集部作成)
上記のアンケートによると、つわりの症状として78.9%の人が「胸やけ・むかむか感・胃もたれ」を感じており、最も多いことが分かりました。それに次ぐように「吐き気・おう吐(77.3%)」「においに敏感になる(67.2%)」となっています。
また、「食欲不振」も48.3%の回答があり、食事に関しての悩みは、多くの妊婦さんが直面する深刻な問題であることが分かります。
吐きづわり|吐き気と嘔吐が続く症状
吐きづわりは、つわりの代表的な症状で、吐き気や嘔吐が続きます。つわりによる吐き気が辛い場合は、食べられるものを少しずつ食べる、水分だけでもこまめに摂る、吐きやすい食べ物を避けるなどの対策が有効です。
ビタミンB6を含む食べ物がつわりに良いとされるため、ビタミンB6サプリメントを試してみる※のも良いでしょう。また、生姜や梅干しもつわりに効果があるとされています。
※妊娠期間中にサプリメントを摂取する場合は必ず医師に相談してください。
食べづわり|空腹で気持ち悪くなる症状
食べづわりは、空腹になると気持ち悪くなる症状です。また、お腹は空くけど食べたくない、というジレンマに悩まされる方もいます。
食べづわりの対策としては、空腹にならないように少量の食べ物をこまめに摂ることが有効です。つわりに良い食べ物、例えば、クラッカー、フルーツ、おかしなど、自分が食べられるものを用意しておきましょう。
眠りづわり|異常な眠気に襲われる症状
眠りづわりは、異常な眠気に襲われる症状です。日中や夜、寝起きなど、時間帯を問わず強い眠気に襲われることがあります。眠りづわりの原因はホルモンバランスの変化と考えられています。
十分な睡眠をとるように心がけ、無理をしないことが大切です。眠気が強い時は我慢せず、仮眠を取ったり横になって休むようにしてください。
においづわり|特定のにおいがダメになる
においづわりは、特定のにおいがダメになる症状です。料理のにおいや香水、柔軟剤など、これまで平気だったにおいが急に耐えられなくなることがあります。においづわりの対策としては、苦手なにおいを避けることが一番です。
無香料の洗剤に変更したり、マスクをしてにおいを感じにくくするのもよいでしょう。また、家族など身近な人の体臭に嫌悪感を持ってしまうことも少なくありません。あくまで一時的な症状なので、素直に打ち明けて協力を仰ぐことも大切です。
よだれづわり|唾液が止まらない状態
よだれづわりは、唾液が止まらない状態です。唾液の分泌が増え、常に口の中に唾液が溜まっている感覚があります。飲み込むのがつらい場合は吐き出すことも有効です。こまめにうがいをしたり、ガムを噛むなどの対策を試してみましょう。
つわりの原因は?ホルモンバランスの変化と影響
つわりの原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、妊娠を維持するために分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンや、女性ホルモンの一種であるエストロゲンなどが影響していると考えられています。
これは、このホルモンの変動がつわりの症状の現れる時期に一致していたり、双子や胞状奇胎などhCGのレベルが高い場合には症状がひどくなったり、流産などでhCGのレベルが低くなるとつわりが楽になったりすることから推察されていることです。
また、体質もつわりの症状に関係していると考えられています。例えば、もともと乗り物酔いをしやすい人は、つわりも重くなりやすい傾向があると言われています。
参考:厚生労働省「妊娠出産・母性健康管理サポート|働く女性のつわりについて」
つわりはいつからいつまで?ピーク時期は8週〜10週目頃
つわりの期間には個人差はありますが、一般的には妊娠6週目頃から始まり、8週目から10週目頃のピークを超えると、自然に落ち着いてくる方が多いようです。妊娠13週目以降もつわりが続く場合は、「後期つわり」と呼ばれることもあります。

(編集部作成)
軽いつわりは、一般的に病気と定義されることはありませんが、重度の場合は「妊娠悪阻」という病気として定義されることもあります。食事や水分が十分に取れないと胎児に影響を与える可能性もありますので、遠慮なく医師に相談しましょう。
つわりがひどい時は我慢せず病院へ!受診の目安
つわりは、吐き気や嘔吐、食欲不振、においに敏感になるなど、症状は人それぞれです。特に、水分も受け付けない、体重が急激に減少する、吐いた物に血液が混じるといった症状がある場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
目安1|水分も受け付けない状態が続く
つわりで吐き気が強いと、水分を摂るのも辛くなってしまうことがあります。しかし、水分を摂らない状態が続くと、脱水症状を引き起こす危険性があります。脱水症状は、めまいやふらつき、倦怠感などを引き起こし、母体にも赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があります。
水を飲むと吐いてしまう場合でも、少量ずつ、こまめに水分を摂るように心がけましょう。また、経口補水液やスポーツドリンクなども有効です。それでも水分を受け付けない場合は、点滴が必要になる場合もありますので、医療機関を受診しましょう。
目安2|急激な体重減少がみられる
つわりによって食欲が低下し、体重が減少することは珍しくありません。しかし、短期間で急激に体重が減少する場合は、注意が必要です。急激な体重減少は、母体の栄養状態を悪化させ、赤ちゃんの発育にも影響を与える可能性があります。
1週間で2kg以上体重が減少した場合は、医療機関への受診を検討しましょう。あまりにひどい場合は、入院が必要になるケースもあります。つわりが軽くても、体重減少が気になる場合は、医師や助産師に相談してみましょう。
目安3|吐いた物に血液や胆汁が混じる
つわりで吐く際に、吐瀉物に血液や胆汁が混じっている場合は、消化器系の異常が疑われます。鮮やかな赤い血液や、コーヒーかすのような黒い血液が混じっている場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
胆汁は、黄色や緑色の苦い液体です。胆汁が混じっている場合は、胆嚢炎や胆石などの可能性も考えられます。いずれの場合も、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。
つわりに関するよくある質問
ここでは、つわりに関するよくある質問とその回答を紹介します。
- つわりがないのは大丈夫?流産の関連性は?
- つわりがない、あるいは軽い場合、「妊娠が順調に進んでいるのか」と不安に思う方もいるかもしれません。つわりの症状には個人差があり、全くつわりがない妊婦さんもいます。
つわりの有無や強さは、胎児の状態を直接反映するものではないため、つわりが軽くても、あるいは全くなくても、妊娠は順調に進む場合もあります。
妊娠初期の吐き気や嘔吐は、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌が関係していると考えられていますが、感受性には個人差があるため、つわりの有無が妊娠の成否に直結するわけではありません。
ただし、つわり以外の症状、例えば出血や腹痛などがある場合は、早急に医療機関を受診することをおすすめします。
- つわりを抑える薬はある?
- つわりがひどく、日常生活に支障をきたす場合は、医療機関で相談してみましょう。ビタミンB6製剤が処方されることがあります。ビタミンB6は、つわりの症状を軽減する効果が期待できる栄養素です。
また、妊娠中でも服用可能な漢方薬を処方されることもあります。そして、最終手段ではありますが、あまりにも吐き気や嘔吐がひどい場合は、制吐剤を処方してもらうことも可能です。
「妊娠中は薬を飲めない」と思っている方も多いですが、胎児に影響がないとされている薬剤もあります。つわりがひどい場合は気軽に医師に相談してください。なお、自己判断での服薬は絶対に避けてください。
まとめ
つわりは妊娠初期に多くの妊婦さんが経験する症状で、その種類や症状の重さには大きな個人差があります。一般的には妊娠6週目頃から始まり、8〜10週目でピークを迎え、その後徐々に落ち着いていきます。
主な症状としては、吐きづわり、食べづわり、眠りづわり、においづわり、よだれづわりなどがあり、それぞれに適した対処法があります。これらの症状はホルモンバランスの変化が主な原因とされていますが、個人の体質なども影響すると考えられています。
特に注意が必要なのは、水分も受け付けない状態が続く、急激な体重減少がみられる、吐いた物に血液や胆汁が混じるなどの症状です。このような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
つわりの有無や強さは妊娠の成否と直接的な関係はありません。症状がつらい場合は、医師に相談して適切な治療を受けることができます。つわりは必ず終わりが来る一時的な症状です。無理せず、ご自身の体調に合わせた対策を取りながら、この時期を乗り越えていきましょう。