カンジダ症は多くの人が経験する一般的な感染症ですが、その原因や感染経路について誤解している人も少なくありません。特に、「性的接触によってのみ感染する」という誤解は根強く、パートナー間での不信感を生むことがあります。
この記事では、カンジダ症についての基本的な知識から、感染経路、症状、治療法まで、分かりやすく解説します。

目次
カンジダ菌は誰の体にもいる?カンジダ症の基本知識
カンジダ菌は、健康な人の皮膚や口、消化管、膣などに常在している菌です。通常は、他の常在菌とのバランスが保たれているため、問題を起こすことはありません。しかし、免疫力が低下したり、抗生物質の使用などで菌のバランスが崩れると、カンジダ菌が異常に増殖し、カンジダ症を発症することがあります。
例えば、乳幼児がかかりやすい鵞口瘡や、風邪をひいて抗生物質を服用した後に、口の中に白い膜のようなものができる「口腔カンジダ症」も、この一例です。
また、女性では「膣カンジダ症」がよく知られています。膣カンジダ症は、外陰部のかゆみやおりものの変化が特徴です。おりものは、通常よりも量が多く、白色で酒粕状、またはカッテージチーズ状になることが多いです。また、排尿時の痛みを伴うこともあります。
「皮膚カンジダ症」は、皮膚が赤く腫れ上がり、強いかゆみを伴います。乳児のオムツかぶれや、指の間、股間などに発症しやすいです。爪に感染する「爪カンジダ症」は、爪が厚く変色し、もろくなるのが特徴です。
カンジダ症はうつる?感染経路とリスク
カンジダ症は、うつる場合とうつらない場合があります。「口腔カンジダ症」や「消化器カンジダ症」は、通常、他人には感染しません。ここでは、感染経路とリスクについて詳しく見ていきましょう。
感染経路1|免疫力低下による自己感染

(男女100人に実施した「カンジダに関する意識調査」より編集部作成。)
上記の調査結果によると、「性交渉がなくてもカンジダを発症することがある」ということを知っていたのは4割以下でした。つまり6割以上の人が、カンジダ症に対して、その感染理由を誤解してしまう可能性があることになります。
しかし、カンジダは常在菌であるため、外部から感染するとは限りません。自身の体内にいるカンジダが、免疫力の低下によって過剰に増殖し、カンジダ症を発症することがあります。そのため、パートナーがカンジダ症を発症したからといって、必ずしも不倫や浮気が原因とは限らないのです。
例えば、抗生物質の使用、糖尿病、ステロイド剤の使用、妊娠などは、免疫力を低下させる要因となります。また、風邪をひいたり、疲れているときなども免疫力が低下しやすく、発症のリスクが高まります。免疫力の低下による自己感染は、決して珍しいことではないのです。
感染経路2|性的接触による感染
自己感染が多いとはいえ、カンジダ症は、性行為によってパートナー間で感染する可能性があります。特に膣カンジダ症の場合、性行為によってカンジダがパートナーへ感染するリスクがあるため、発症している場合は、性行為を控えるようにしましょう。
感染経路3|日常生活での感染は稀
カンジダは常在菌なので、日常生活で感染するケースは稀です。タオルや衣類の共用、便座などから感染する可能性は低いと考えられています。
しかし、抵抗力が極端に弱っている場合は、日常生活での感染リスクもゼロではありません。特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人は、衛生面に気を配ることが大切です。タオルの共用は避け、こまめな手洗いを心がけるなど、感染予防を習慣化するように努めましょう。
カンジダ症は自然治癒する?放置するとどうなる?
カンジダ症は、軽度の場合は自然治癒することもありますが、多くの場合は適切な治療が必要です。例えば、軽度の口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症は、免疫力が回復すれば自然治癒する可能性があります。
しかし、膣カンジダ症や重症化したカンジダ症は、自然治癒は難しいと考えられています。放置すると症状が悪化したり、他の病気を併発したりする可能性があるため、注意が必要です。カンジダ症は、早期に治療を開始することで、症状の悪化や慢性化を防ぐことができます。
「膣のかゆみで病院に行くのは恥ずかしい」と思う人も少なくありませんが、カンジダは女性なら誰でもかかる可能性のある一般的な感染症です。婦人科や産婦人科であれば、よくある受診理由の一つなので、一人で抱え込まず気軽に受診してみてください。
カンジダ症の検査と治療の流れ
カンジダ症が疑われる場合、まずは医療機関を受診しましょう。女性の場合は婦人科や産婦人科。男性は泌尿器科、子どもであれば小児科でも受診可能です。また、皮膚科や口腔外科など症状が出ている部位に対応した病院でも治療ができます。
なお、膣カンジダの再発時は市販薬を使用可能です(初めて発症した場合は受診が必要)。ただし、6日間使用しても症状が改善しない場合は、再度受診するようにしましょう。
検査方法としては、口腔カンジダ症であれば、口の中の白い斑点などを視診で確認します。膣カンジダ症の場合は、膣分泌物を採取し、顕微鏡でカンジダ菌の有無を調べます。
治療法は、感染部位や症状の程度によって異なりますが、抗真菌剤の錠剤やクリーム、軟膏などが処方されることが一般的です。治療期間は、症状の改善状況によって異なりますが、通常は数日から数週間程度です。医師の指示に従って、きちんと治療を継続しましょう。
また、カンジダ症は再発しやすい感染症でもあります。再発を防ぐためには、日常生活でバランスの取れた食事を摂り、免疫力を高める、皮膚や粘膜を清潔に保つ、通気性の良い衣類を着用する、などの対策をしましょう。
まとめ
カンジダ菌は、健康な人の皮膚や口、消化管、膣などにも常在している菌であり、誰にでも発症する可能性があります。性交渉によって感染するケースもありますが、多くの場合は自身の体内にいるカンジダ菌が原因となる自己感染です。
カンジダ症の種類は様々で、口腔カンジダ症、膣カンジダ症、皮膚カンジダ症など、体の様々な部位に発症します。症状も、かゆみ、痛み、おりものの変化など、多岐にわたります。
軽度のカンジダ症は自然治癒する可能性もありますが、多くの場合は適切な治療が必要です。放置すると症状が悪化したり、他の病気を併発したりするリスクがあるため、早期に医療機関を受診することが大切です。
もし、カンジダ症が疑われる症状がある場合は、一人で悩まず、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けるようにしましょう。