家族やパートナーのいびきがうるさくて眠れない夜が続くと、疲れやストレスがたまりやすくなります。その結果、関係までぎくしゃくしてしまうことも少なくありません。
いびきは「うるさい音」ではなく、健康状態の変化を知らせるサインの一つです。放っておくと本人だけでなく、周囲の健康や生活にも影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、相手のいびきが起こる主な原因や放置によるリスクを解説します。家庭でできる対策や、改善しない場合の受診の目安も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
相手のいびきがうるさいのはなぜ?考えられる原因

いびきは、睡眠中に空気の通り道である「上気道」が狭くなり、そこを空気が通ることで起こる振動音です。つまり、気道が何らかの理由で狭まっていることが根本原因です。
主な原因は、大きく3つのパターンに分けられます。
生活習慣によるもの
飲酒や肥満、寝る姿勢など、日常の習慣がいびきに大きく関係しています。
一見ささいなことでも、喉や気道に影響を与え、睡眠中の空気の流れを悪化させることがあります。
- 飲酒:アルコールの作用によって喉の筋肉が緩み、気道が狭くなる状態。寝る前の飲酒、特に「寝酒」はいびきを悪化させる要因。
- 肥満:首や舌のまわりに脂肪がつき、空気の通り道を圧迫する状態。減量によっていびきが軽くなるケースも多く、最も基本的な改善策のひとつ。
- 仰向け寝:舌が重力で喉の奥に落ち込みやすく、気道をふさぎやすい姿勢。横向き寝に変えると振動音が軽くなりやすく、抱き枕を使うと姿勢を保ちやすい。
構造的な要因
鼻や喉の構造そのものが原因となるケースもあります。
特に、鼻づまりや扁桃肥大などで空気の通り道が狭い人はいびきをかきやすくなります。
- 鼻づまりや鼻中隔のゆがみ:鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸が増えることで喉が振動しやすい状態。
- 扁桃肥大による気道の狭さ:子どもに多く見られるが、大人でも扁桃の腫れが原因となるケース。
- アレルギー性鼻炎による慢性的な鼻閉:季節性や通年性の鼻炎で鼻づまりが続き、いびきが慢性化しやすい状態。
病気が関係している場合
いびきの背景に、生活習慣や構造の問題を超えた病気が隠れていることもあります。
代表的なのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)で、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気です。大きないびきや日中の強い眠気が代表的な症状のひとつです。
放置すると、酸素不足から高血圧・心疾患・脳梗塞のリスクが高まるため、医療機関での検査が必要となります。
また、まれに甲状腺機能低下症などホルモンの異常によって喉や舌がむくみ、気道が狭くなることでいびきを引き起こすこともあります。
このように、いびきが続く背景には病気が隠れている可能性もあるため、「音」だけでなく健康のサインとしても注意が必要です。
参考:日本呼吸器学会「I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」
参考:日本内分泌学会「甲状腺機能低下症」
いびきを放置しても大丈夫?考えられるリスク
いびきを放置すると、本人の体にも周囲にも悪影響が及びます。一時的な疲労ではなく、慢性的な健康リスクにつながる可能性があるため注意が必要です。
ここでは、いびきを放置したときに起こりやすい体への影響や、周囲への悪影響について解説します。
本人への影響
いびきを放置すると、睡眠の質が下がるだけでなく、心臓や脳にも負担がかかります。
主なリスクは以下の通りです。
| 影響内容 | 主な症状・リスク |
|---|---|
| 睡眠の質の低下 | 日中の眠気・集中力の低下・倦怠感などが続く |
| 心臓や脳への負担 | 高血圧・動悸・頭痛・めまいが起こりやすくなる |
| 生活習慣病リスク | 長期的に心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がる |
これらは「年齢のせい」や「疲れ」と誤解されがちです。実際には、睡眠中に十分な酸素が取り込めていない、あるいは深く眠れていないことが関係しているケースもあります。
継続する場合は、早めに専門医へ相談することが大切です。
周囲への影響
いびきは、聞いている側にとっても深刻な「生活騒音」です。
家族やパートナーが眠れない夜が続くと、疲労やストレスが蓄積し、関係にも悪影響を及ぼします。
| 周囲への影響 | 内容・リスク |
|---|---|
| 睡眠不足 | 夜間の騒音で深い眠りに入りづらく、慢性的な疲労やイライラが生じる |
| 精神的ストレス | 「また眠れない」という不安や緊張が続き、ストレスが増す |
| 関係悪化 | 注意しても改善されず、夫婦・家族間で不満や衝突が起こりやすくなる |
パートナーのいびきによって自分の睡眠の質まで低下することは少なくありません。
無理に我慢せず、耳栓やホワイトノイズの利用、寝室を分けるなど、自分を守る工夫も検討しましょう。
家庭で取り組めるいびき対策の工夫
医療機関を受診する前に、まずは家庭でできる工夫から試してみましょう。
いびきの原因は人によって異なりますが、寝る姿勢・生活習慣・睡眠環境を整えることで、音が軽くなる場合があります。
ここでは、今日から取り入れやすい対策を紹介します。
寝姿勢を整える
仰向け寝はいびきを悪化させやすいため、横向きで寝るのがおすすめです。
横向きになると気道が確保されやすく、いびきの音も軽くなる傾向があります。抱き枕を使ったり、背中にタオルを入れたりすると、横向き姿勢をキープしやすくなります。
ただし、体格やいびきの原因によって効果には個人差があります。無理のない範囲で姿勢を工夫し、自分に合った寝方を意識してみてください。
生活習慣を見直す
いびきの原因には、日常の習慣も大きく関係しています。
特に以下の3点を意識することで、喉の筋肉の緊張や呼吸の乱れを防ぎやすくなります。
<寝る前の飲酒を控える>
アルコールには筋肉をゆるめる作用があり、気道が狭くなりやすくなります。特に「寝酒」は睡眠の質を下げ、いびきを悪化させる要因です。
<体重を適正に保つ>
肥満気味の人は首や舌の周囲に脂肪がつき、気道が圧迫されやすくなります。少しの減量でも改善が見られることがあります。
<就寝前の食事を控える>
食後すぐに横になると、胃の内容物が上がりやすく、呼吸を妨げることがあります。就寝の2時間前までに食事を済ませましょう。
市販のいびき対策グッズを活用
いびきのタイプによっては、市販グッズを使うことで音を軽減できる場合があります。
自分の症状に合ったアイテムを選び、正しい方法で使用することが大切です。
| グッズ | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 鼻拡張テープ | 鼻に貼って鼻腔を広げる | 鼻づまりタイプの人 |
| 横向き寝枕 | 横向き姿勢を保ちやすい形状 | 仰向けでいびきが強く出る人 |
グッズを選ぶ際は、「いびきの原因がどこにあるか」を意識することがポイントです。鼻づまりや口呼吸が原因ならテープ類、姿勢が関係しているなら横向き寝用の枕が向いています。
状態に合わないグッズを使うと、かえって呼吸が苦しくなるおそれがあるため、使用の際は注意が必要です。
相手にどう伝える?関係を悪化させない伝え方
いびきの指摘はとてもデリケートな話題です。伝え方を誤ると、相手を傷つけたり、関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
大切なのは、「非難ではなく、健康を気遣う伝え方」を意識することです。
「最近呼吸が苦しそうで心配」など、相手の体調を思いやる言葉を選びましょう。また、「一緒に対策を考えよう」という姿勢を見せると、受け入れてもらいやすくなります。
スマートフォンの録音アプリで実際のいびきを聞いてもらうのも有効です。本人がいびきを自覚することで、対策に前向きになるケースもあります。
一方的に責めるのではなく、二人で協力して改善していく姿勢が大切です。
改善しない場合は医師に相談を
家庭での工夫を続けてもいびきが改善しない場合、または以下のようなサインがある場合は、医療機関に相談しましょう。
- いびきが毎晩続いている
- 睡眠中に呼吸が止まると指摘された
- 日中の強い眠気や頭痛がある
受診先としては、耳鼻咽喉科・呼吸器内科・睡眠外来などが挙げられます。
まずは問診や簡易検査で、いびきのタイプを特定します。必要に応じて「終夜睡眠ポリグラフ(PSG)」という一泊検査を行い、睡眠中の呼吸状態や酸素濃度を詳しく調べます。
検査結果に応じて、以下のような治療が提案されます。
| 治療法 | 内容 | 対象となる症状 |
|---|---|---|
| マウスピース療法 | 下あごを前に出すように固定し、気道を広げる | 軽度〜中等度の睡眠時無呼吸症候群 |
| CPAP療法 | 鼻マスクから空気を送り、無呼吸を防ぐ | 中等症以上(AHI≧20)の睡眠時無呼吸症候群 |
| 手術・体位療法 | 構造的な狭窄への対処 | 鼻中隔湾曲・扁桃肥大など |
寝れない夜を我慢するよりも、原因を確かめて安心することが何より大切です。
まとめ
パートナーや家族のいびきは、単なる騒音ではなく、健康のサインであることも少なくありません。我慢するのではなく、原因を確かめ、できる対策を一つずつ試していくことが大切です。
まずは寝姿勢や生活習慣を見直し、家庭でできる工夫から始めましょう。それでも改善しない場合は、専門の医師に相談して、体の状態をしっかり確認してください。静かな夜と快適な眠りを取り戻すことは、あなた自身と相手の健康、お互いの関係を守ることにもつながります。
