毎日嘔吐があり、食事や水分をとっても吐いてしまう状態が続くと、自分の症状が一般的なつわりの範囲なのか気になる方も多いでしょう。毎日吐く状態が続くなかで、この程度はよくあることなのか、受診を考えたほうがよいのかと迷う方も少なくありません。
この記事では、毎日吐く人の位置づけを医学的な視点から整理し、受診を考える目安について解説します。いまの状態を判断するための参考にしてください。
目次
つわりで毎日吐く人の割合は?まず結論

実は「毎日吐く人」に限定した国内の代表的データは限られており、一般に引用される形での統計は示しにくいのが現状です。ここで知っておきたいのは、つわり全体と「妊娠悪阻(にんしんおそ)」という重症状態の間に、広い中間層があるという構造です。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会が発行する「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」では、妊娠初期の悪心・嘔吐(いわゆるつわり)は半数以上の妊婦にみられるとされています。
そのなかで、脱水や体重減少、電解質の乱れなどを伴い、輸液や入院が必要になることもある妊娠悪阻は全妊婦の約0.5〜2%と報告されています。つまり多くの場合、つわりの症状はあっても妊娠悪阻と診断されるほどではなく、毎日吐いていても中間層に位置するケースが少なくありません。
▼状態別の目安
| 状態 | 目安の頻度 | 特徴 |
|---|---|---|
| つわり全体 | 半数以上 | 吐き気・嘔吐を含む |
| 毎日吐く人 | 明確な統計なし | 中間層(グレーゾーン)に多い |
| 妊娠悪阻 | 約0.5〜2% | 点滴や入院が必要になることも |
毎日吐くという症状自体は一定数みられますが、判断の目安になるのは頻度よりも生活への影響です。
参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023(PDF)」
つわりで吐き気や嘔吐が起こる理由
妊娠中に吐き気や嘔吐が強くなる背景には、ホルモンの変化や胃腸の働きの変化など、複数の要因が関係しています。
ここでは、つわりの吐き気に関わりやすい代表的な理由を見ていきましょう。
妊娠に伴うホルモン変化で胃腸の働きが弱くなる
妊娠初期には、体内でhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)やプロゲステロンといったホルモンが増加します。特にプロゲステロンには筋肉の緊張を緩める作用があり、胃や腸の動きが緩やかになることで、食べたものが胃にとどまりやすくなり「むかつき」や「吐き気」が生じやすくなります。
こうした変化には、主に次のような要素が関係していると考えられます。
- hCGの増加と吐き気の関連
- プロゲステロンの影響による胃の動きの低下
- 胃内容物の停滞による不快感や嘔吐
これらはいずれも妊娠に伴う体の変化の一部で、多くの人にみられる反応です。
におい・空腹・疲労などが重なりやすい
ホルモンの影響によって嗅覚が敏感になり、普段は気にならない料理のにおいや香水で強い吐き気を感じることがあります。また、空腹になると胃酸が増えて症状が悪化しやすく、逆に食事をとると気持ち悪くなるという悪循環に陥ることもあります。
疲労や睡眠不足も、つわりの症状を強める要因のひとつです。
- においへの過敏:特定のにおいで急に吐き気が出ることがある
- 空腹の影響:胃が空になると症状が強まりやすい
- 疲労や睡眠不足:体力の低下で症状が出やすくなる

「毎日吐く」状態はどのくらい重い?位置づけを整理
つわりの症状には「軽い・重い」の明確な境界線があるわけではありません。
軽症から重症までは連続しており、感じ方にも個人差があります。
つわり全体と妊娠悪阻の間にある“グレーゾーン”
医学的に「妊娠悪阻」と診断されるには、体重減少・電解質異常・尿中ケトン体陽性など、いくつかの基準があります。毎日吐いていてもこれらの基準に達しないケースは多く、「診断はつかないものの、明らかにつらい」状態の人がこの中間層に多く含まれます。
国際的には、PUQE(Pregnancy-Unique Quantification of Emesis)と呼ばれる評価指標が用いられており、24時間の吐き気の持続時間や嘔吐・えづきの回数などをもとに重症度を判断します。数値そのものを覚える必要はありませんが、「吐いた回数や吐き気の長さで状態を客観的に評価する考え方がある」と知っておくと、自分の状況を整理しやすくなります。
▼重症度の目安
| 重症度 | 主な特徴 |
|---|---|
| 軽症 | 吐き気はあるが、日常生活はおおむね可能 |
| 中等症 | 毎日吐く、食事がとれない日がある |
| 重症(妊娠悪阻) | 水分もとれない、体重減少、入院が必要になることも |
「毎日吐く」という症状だけで重症度は決まりませんが、食事や水分がとれないなど日常生活に支障が出ている場合は、医療的な対応が必要になることもあります。
参考:National Library of Medicine「Pregnancy-Unique Quantification of Emesis (PUQE) scoring system」
よくある生活レベルの目安
自分の状態を把握する際は、次の点を目安にしてみてください。
- 水分(水・お茶・スポーツドリンクなど)が少量でも飲めているか
- 横になると楽になる時間帯があるか
- 妊娠前と比べて体重が大きく減っていないか
これらがある程度保たれている場合は、経過を見られる余地があります。ただし、当てはまらない項目が複数ある場合は、早めに医療機関へ相談することも検討してみてください。
様子見でよいケース/相談を考えたいケース
「いつ医療機関へ相談すればよいのか」は、多くの人が迷いやすいポイントです。
あらかじめ目安を知っておくと、自分の状態を判断しやすくなります。
比較的様子見でよい目安
次のような状態であれば、すぐに受診せず、経過を見ることも考えられます。
- 水や飲み物を少量ずつ飲めている
- 1日に数回は尿が出ている
- 横になると楽に過ごせる時間帯がある
- 食事は難しくても、水分補給はできている
ただし、「様子見でよい」というのは「何もしなくてよい」という意味ではありません。毎日の体調や体重、水分量などを簡単に記録しておくと、受診時の説明がスムーズになります。
早めに相談を考えたいサイン
次のような状態が続いている場合は、早めに医療機関へ相談することも検討してみてください。
- 水分がほとんどとれない(飲んでもすぐ吐いてしまう)
- 尿の回数が極端に少ない、または色がとても濃い
- 1〜2週間で体重が急に減ってきた
- 家事や仕事など、日常生活がほとんど回らなくなっている
尿が出にくい状態は脱水のサインです。また、急激な体重減少も体への負担が大きくなっている可能性を示します。
「もう少し様子を見てから」と思いがちですが、このような状態では早めに相談したほうが、結果的に体への負担を抑えられることもあります。
自分でできる対処と、無理をしない考え方
毎日吐く状態が続いていると、「何か自分でできることはないか」と考える方も多いでしょう。
つわりを完全に防ぐ方法はありませんが、日常の中で症状を少し和らげられる工夫はあります。
吐きやすい時期の過ごし方と水分・食事の工夫
食事は一度にたくさん食べようとせず、少量を何回かに分けて口にするほうが、胃への負担が少なくなります。温かいものより冷たいもののほうが食べやすい場合もあり、梅干しやレモン水など、酸味のあるものが口に合うこともあります。
水分は一気に飲まず、ひと口ずつこまめにとるのがポイントです。経口補水液は電解質を補いやすく、水分補給の選択肢になります。
▼日常で意識しやすいポイント
| 項目 | 意識したいポイント |
|---|---|
| 食事 | 少量を何回かに分けて口にする |
| 温度 | 冷たいもの、冷ましたものを試す |
| 酸味 | すっぱいものが合う場合もある |
| 水分 | ひと口ずつ、こまめに補給する |
つらさは人と比べなくていい
「もっとひどい人がいる」「この程度で受診していいのか」と感じる方も少なくありません。ただ、つわりのつらさは数値だけで測れるものではありません。毎日吐きながら仕事を続けている人もいれば、横になっていないと過ごせない人、水を飲むことさえ大変な人もいます。
同じ「毎日吐く」状態でも、置かれている状況はさまざまです。他の人と比べて我慢する必要はありません。生活に支障が出ている、助けが必要だと感じているのであれば、それだけで相談する理由になります。

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まとめ
毎日吐いている状態は決して珍しいものではありません。つわりは妊婦の半数以上にみられ、その中には、妊娠悪阻と診断されるほどではないものの、毎日嘔吐が続く中間的な状態の人も多く含まれています。
「毎日吐く人」の正確な割合を示すデータはありませんが、食事や水分がとれない状態が続く場合や、尿量の減少・体重減少などがみられる場合は医療的な対応が必要になることもあります。
我慢できるかどうかを基準にする必要はありません。生活に支障が出ている、つらいと感じているのであれば、それは相談してよい状態です。
