妊娠初期を中心に、多くの人が経験するつわり。「こんなに辛いのは普通なの?」「どう対処すればいい?」と悩みながら検索している方も多いのではないでしょうか。つわりのつらさには個人差があり、原因も一つではありません。
この記事では、つわりが辛くなる主な理由や日常でできる対処法、生活への影響、受診を考える目安までを分かりやすく解説します。
東京慈恵会医科大学医学部卒業。現在は板橋中央総合病院の産婦人科医長として、妊婦健診や分娩管理、新生児対応をはじめ、切迫流産・早産の管理などにも従事。婦人科領域では、子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症・骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌・卵巣癌に対する手術および化学療法(抗がん剤治療)まで幅広く対応。さらに、PMS(月経前症候群)や更年期障害など、ホルモンバランスに関連する女性特有の不調についても積極的に診療している。日本産科婦人科学会専門医として、日々多くの女性の健康課題に向き合い、臨床の第一線で診療を続けている。
目次
つわりが辛い時に考えられる原因

「なぜ自分だけこんなに辛いのだろう」と感じる方もいますが、つわりの原因は決して一つではありません。
体の変化や環境の変化など、複数の要因が複雑に重なり合って起こるものです。
まずは、最新の研究で分かってきた原因も含め、なぜ体調が悪化しやすいのかを詳しく見ていきましょう。
妊娠初期のホルモンバランスと新しい原因物質の変化
つわりは、妊娠によって体内のホルモン環境が大きく変化することで起こると考えられています。
これまで、妊娠初期に胎盤から分泌される「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」と吐き気との関連が指摘されてきました。近年では、胎盤で作られる「GDF15」というタンパク質が、つわりの重症度に関係している可能性も報告されています。これらは赤ちゃんの発育に欠かせない物質ですが、母体にとっては急激な変化となるため、吐き気や胃の不快感につながる場合があります。
症状の強さには個人差があり、体質やホルモンへの感受性の違いが影響していると考えられています。
参考:Fejzo M 他「<a href="https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38092039/" target="_blank" rel="noopener">GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy</a>」Nature 2024
夕方や夜に症状が強くなりやすい理由
つわりの感じ方や強く出る時間帯には個人差があります。なかには、夕方以降に疲労がたまったり、空腹時間が長くなったりすることで、吐き気が強まる人もいます。空腹状態が続くと気分不快が悪化しやすいため、少量ずつ食べることで楽になるケースも少なくありません。
また、一日の緊張がほどける夕方以降は、自律神経が乱れやすく、急に体調が崩れることもあります。あらかじめ体調が落ちやすい時間帯を意識し、午後以降は予定を詰め込みすぎないことも大切です。
プロゲステロンによる胃腸の動きと自律神経の変化
妊娠を維持するために分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」には、全身の筋肉をゆるめる作用が備わっています。その影響は内臓にも及び、胃腸の動きが通常よりもゆっくりになることで、食べ物が胃にとどまりやすくなるのも特徴の一つです。こうした消化管の変化によって、特有のムカムカ感や重い胃もたれを感じる人も少なくありません。
さらに、自律神経のバランスが乱れることで眠りが浅くなったり、どれだけ横になっても疲れが取れにくくなったりすることもあります。体力が十分に回復しない状態では、普段なら耐えられる程度の吐き気であっても、より強く自覚しやすくなってしまいます。
仕事や育児による身体的・精神的負担
日常生活における負担の大きさも、つわりの感じ方に強く影響します。例えば、長時間の通勤・立ち仕事・重い荷物を持つ家事・休む間もない育児などは、本人が思っている以上に体へ大きな負荷をかけているものです。こうした身体的な疲れの蓄積が、つわりの症状を直接的に重くする引き金となります。
また、「職場に迷惑をかけられない」「上の子の面倒をしっかり見なければならない」といった強い責任感も、精神的なつらさを増幅させてしまう一因です。過度なストレスは自律神経をさらに乱すため、体調をより悪化させる悪循環を招きかねません。
「休めない環境」に身を置いていること自体が、つわりを乗り越える上での大きな壁となっている現実があります。今の自分がどれほど頑張りすぎているか、一度客観的に振り返ってみる時間を持つのも、体調管理において大切な手順といえるでしょう。
つわりが辛い時にできる対処法
つわりを完全に止める魔法のような方法はありませんが、日々のちょっとした工夫でその負担を軽くできる場合はあります。
大切なのは、「これをすれば治る」と完璧を求めるのではなく、自分に合う方法をいくつか持っておくことです。
ここからは、日常で取り入れやすい対処の方法を紹介します。
食事のとり方・水分補給の工夫
つわり中の食事は、無理に栄養バランスを考えすぎないことが基本です。一度にたくさん食べようとせず、食べられるものを少しずつ、回数を分けて口にする「少量頻回」の考え方を取り入れてください。
空腹の時間を短くすることで、吐き気が和らぐ人もいます。具体的には、クラッカーやゼリー、冷やしたおにぎりなど、匂いが気にならずサッと食べられるものが便利です。
また、水分が摂れなくなると脱水症状が進み、さらにつわりが悪化するため、水やお茶が飲めない時はスポーツドリンクや氷を活用して少しずつ補給しましょう。どうしても何も食べられない時は、一口サイズのフルーツや、酸味のある飲み物を試してみてください。
「今は食べられるものだけで大丈夫」と自分に許可を出すことが、気持ちを楽にするコツです。
姿勢や休み方など日常生活でできる対策
体の向きや休み方を工夫するだけでも、胃の不快感が和らぐことがあります。横になる際は、完全にフラットな状態で寝るよりも、クッションや枕を使って上半身を少し高くした方が胃酸の逆流を防ぎやすくなります。
また、体を締め付ける下着や服は避け、ゆったりとした服装で過ごすことも物理的な不快感を減らすために有効です。
外出先や仕事中であっても、「少しでも違和感が出たら5分休む」といった短時間の休憩を意識的に取り入れてください。無理に動き続けると症状が長引き、回復に時間がかかってしまいます。「まだ動けるから大丈夫」と思わず、体調が悪くなる一歩手前で手を止める習慣をつけることが、一日を乗り切るための賢い方法です。
吐かないつわり・ムカムカが続く場合の対応
「実際に吐いていないから、自分はまだ軽い方だ」と無理を重ねてしまう方もいますが、これには注意が必要です。吐き気はあるけれど戻せない、いわゆる「吐かないつわり」であっても、精神的・身体的な消耗は非常に激しくなってしまいます。常に乗り物酔いをしているようなムカムカ感が続く状態は、集中力を奪い、日常生活の質を大きく下げる要因となるからです。
こうした場合は、自分の状態を「軽い」と決めつけず、客観的に辛さを認めてあげることが重要だといえます。例えば、「家事がいつもの半分もできていない」「仕事中に何度も机に伏せてしまう」といった状況があれば、十分にケアが必要なサインです。
吐く・吐かないといった回数だけで判断せず、自分の心が折れそうになっていないか、毎日どれほど不快感に耐えているかに目を向けてみてください。

仕事や育児への影響|生活が回らなくなるつわり
つわりは単なる「体調不良」に留まらず、仕事や家庭生活そのものを立ち行かなくさせることがあります。
本人の努力や気合だけではどうにもならない場面が多いからこそ、どのような影響が起こりやすいのかを知り、周囲に相談する準備を整えておくことが大切です。
仕事を続けるのが難しくなるケース
仕事を持っている方にとって、つわり中の勤務は想像以上に過酷なものです。激しい吐き気やだるさによって集中力が低下し、普段通りのパフォーマンスを発揮できないことに焦りを感じるかもしれません。特に満員電車での通勤は、匂いや揺れによって症状が急激に悪化しやすく、出勤するだけで体力が底をついてしまうこともあります。
職場では「まだ安定期ではないから」と周囲に打ち明けられず、一人で耐え忍んでしまうケースも多いです。しかし、無理を重ねて職場で倒れてしまったり、ミスを繰り返したりすることは、さらに自分を追い詰める結果になりかねません。休みたいと言い出しにくい状況であっても、自分の体と赤ちゃんのことを最優先に考え、早めに働き方の調整を検討することが現実的な対応といえます。
上の子がいる場合に負担が増えやすい理由
上の子のお世話をしながらのつわりは、一人目の時とは比べものにならないほどの負担がかかります。自分の体調がどれほど悪くても、子供の食事の準備・オムツ替え・遊び相手・保育園の送迎などは休みなく続きます。抱っこをせがまれた際にお腹を圧迫されたり、子供のご飯の匂いで吐き気が誘発されたりと、休まる暇がありません。
こうした状況で「母親だから頑張らなくては」と完璧を目指すと、すぐに限界が来てしまいます。育児をしながらのつわりは、もはや「病気で寝込んでいる時」と同じ緊急事態であると認識してください。パートナーや親族、あるいは行政の手助けを借りることは、決して甘えではなく家族を守るために必要な手段です。
無理を重ねることで起こりやすい悪循環
つわりを気力で乗り切ろうと無理を重ねると、本人の意思とは裏腹に、深刻な悪循環へ陥ってしまう恐れがあります。疲労が蓄積するほど症状は強まり、体調が悪化すれば睡眠や食事もままならなくなるものです。その結果、さらに体力が落ち込むという負のループに入りやすくなるでしょう。
こうした状態が続くと精神的なバランスも崩れやすくなり、理由もなく涙が出たり、気持ちが沈んだりするケースも見られます。周囲からの「いつか終わる」という言葉は医学的には正しくても、今まさに苦しんでいる人にとっては遠いゴールに感じられることがあります。出口の見えない状況が続く中で、ふとした瞬間に希望を失ってしまう人も少なくありません。
だからこそ、心身の限界を迎える前に、仕事量を減らす・家事の代行サービスを利用する・実家を頼るなど、環境を整える視点が重要です。早めに自分を守る行動を取ることが、心身の負担を抑えるための大切な一歩になります。
つわりが辛い時の受診目安
「病院に行っても耐えるしかない」と思いがちですが、医療機関で相談することで症状の悪化を防げる場合があります。
以下に当てはまる場合は、早めに医師へ相談を検討してください。
- 水分を摂っても吐いてしまい、尿の回数が減っている
- 体重が妊娠前より5%以上減っている
- 数日ほとんど食事が摂れない状態が続いている
- 強いふらつきや精神的なつらさがある
これらは「妊娠悪阻(にんしんおそ)」の可能性があり、治療が必要なケースもあります。症状が続く場合は、無理をせず医療機関を頼りましょう。

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まとめ
つわりのつらさは、ホルモンの変化や胃腸の動きの低下、自律神経の乱れ、生活環境など、複数の要因が重なって起こります。
食事や休み方を工夫することで楽になる場合もありますが、日常生活に支障が出ている状態は無理を続けるべきではありません。症状が続く場合は、早めに医師に相談しましょう。
