つわりを和らげる薬はある?市販薬や漢方、海外薬まで徹底解説

つわりは、吐き気や嘔吐、食欲不振といった典型的な症状だけでなく、特定の匂いに敏感になったり、これまで好きだった食べ物が食べられなくなったりと、生活の様々な面に影響が出ます。つわりは胎児の健全な発育の兆候とも言われていますが、あまりにもつらい場合は医療に頼って良いのです。

この記事では、つわりの症状と原因、そして安全に症状を緩和する方法について詳しく解説していきます。どんな薬を飲めばいいのか、自己判断で服用しても大丈夫なのか、つわりで薬を使用する際の注意点についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

医師 新田凌也
当記事の監修医師
医師:新田 凌也
島根大学医学部卒業卒業後、神戸大学医学部附属病院、丹波医療センター研修。ミライメディカルクリニックでオンライン診療全般を担当。

つわりとは?症状と原因

つわりは、妊娠初期に多く見られる症状です。妊娠6週頃から始まり、13週頃には落ち着くことが多いようです。ただし個人差が大きく、症状の重さや期間も人それぞれです。ここでは、つわりでよくある症状と現在分かっている原因について紹介します。

つわりの主な症状

つわりの症状は吐き気だけではありません。頭痛、胃もたれ、倦怠感など、様々な症状が現れる可能性があります。

症状の種類主な症状
消化器症状吐き気嘔吐食欲不振むかつき
嗅覚・味覚の変化特定の匂いが気になる味覚の変化食べ物の好み変化
体調の変化疲れやすいめまいだるさ食欲低下
精神的症状イライラ不安感気分の落ち込み

朝起きた時の吐き気に悩まされ、何も食べられない日が続いたり、特定の匂いに敏感になって普段は好きな食べ物の匂いでも吐き気を催してしまうという方もいます。つわりの症状は多岐に渡るため、ご自身の症状を把握し、適切な対処法を見つけることが重要です。

症状が強く、著しく食事量が減少してしまったり、脱水症状に陥るなど日常生活が困難になる場合は、我慢せず病院に相談するようにしてください。

つわりの原因とは?ホルモンの影響と体質の関係

つわりの原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、妊娠によって増加するホルモン、特にhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の影響が大きいと考えられています。

これは、このホルモンの変動がつわりの症状の現れる時期に一致していたり、双子や胞状奇胎などhCGのレベルが高い場合には症状がひどくなったり、流産などでhCGのレベルが低くなるとつわりが楽になったりすることから推察されていることです。

また、体質もつわりの症状に関係していると考えられています。例えば、もともと乗り物酔いをしやすい人は、つわりも重くなりやすい傾向があると言われています。

軽いつわりは、一般的に病気と定義されることはありませんが、重度の場合は「妊娠悪阻」という病気として定義されることもあります。食事や水分が十分に取れないと胎児に影響を与える可能性もありますので、遠慮なく医師に相談してみましょう。

参考:厚生労働省「妊娠出産・母性健康管理サポート|働く女性のつわりについて

海外で認可されているつわり治療薬とは?

日本では認可されていませんが、海外ではいくつかのつわり治療薬が存在します。

薬剤名特徴使用国
Diclegis(ディクレジス)アメリカFDAでは妊婦に最も安全な「カテゴリーA」に分類されているアメリカ
Bonjesta(ボンジェスタ)徐放性製剤のため、効果の発現はDiclegisより遅いが、長時間持続するアメリカ
Xonvea(ゾンベア)イギリスで初めて承認。保存的治療で改善しない場合に使用されるイギリス
Diclectin(ディクレクチン)カナダで唯一の処方箋つわり治療薬。40年以上の使用実績があるカナダ

いずれも日本では認可されていませんが、一部の医療機関では、これらの類似薬を個人輸入して処方している場合もあります。ただし、必ず信用できる医師に相談し、適切な指示に従ってください。

国内で認可されているつわりを和らげる薬はある?治療法3つ

つわりは、吐き気や嘔吐、食欲不振など、日常生活に支障をきたすこともあります。日本では、つわり専用の薬というものはありませんが、少しでも症状を和らげる薬等の処方は可能です。ここでは、つわりを和らげる治療法を3つ紹介します。

治療法1|ビタミンB6による治療

つわりの症状緩和には、ビタミンB6の服用が有効とされています。ビタミンB6は、つわりの原因となるホルモンバランスの乱れを整え、吐き気や嘔吐の症状緩和に効果的です。胎児の発達に重要な栄養素であり、適切な摂取量であれば安全性が確認されています。

市販薬の中にビタミンB6が含まれているものもありますが、妊娠中は自己判断で服用せず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。これらのビタミン剤は、産婦人科で処方してもらえます。栄養補給の面でも役立ちますので、服用を検討してみてください。

治療法2|漢方薬による治療

つわりの症状に合わせて、漢方薬が処方されることもあります。漢方は西洋薬(一般的な薬)ほどの即効性はありませんが、副作用が少なく、身体への影響が少ないのが特徴です。

漢方薬主な効果
小半夏加茯苓湯
しょうはんげかぶくりょうとう
吐き気の改善むかつきの軽減食欲不振の改善
半夏厚朴湯
はんげこうぼくとう
つわりの軽減不安感の改善のどの違和感改善
人参湯
にんじんとう
体力回復消化機能改善冷え症改善

小半夏加茯苓湯は、胃のむかつきや吐き気に効果があるとされています。また、半夏厚朴湯は、不安や緊張を和らげ、つわりによる精神的な負担を軽減する効果が期待できます。さらに、人参湯は、胃腸の働きを助け、食欲不振を改善する効果があります。

漢方薬も市販で流通していますが、特に妊娠中なので、医療機関で体質や症状に合わせて処方してもらうようにしましょう。

治療法3|制吐剤による治療

つわりがひどく、日常生活に大きな支障が出ている場合は、制吐剤が処方されることもあります。制吐剤は、吐き気を抑える効果があり、つわりの症状を軽減することができます。

ただし、制吐剤の中には、胎児への影響が懸念されるものもあるため、医師の指示に従って服用することが重要です。つわりがつらい時は、我慢せずに医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。

つわりを和らげる薬を選ぶ際の注意点3つ

つわりで吐き気や頭痛などの症状に悩まされている妊婦さんは、薬に頼りたくなるかもしれません。しかし、つわりの薬選びにはいくつか注意点があります。特に妊娠中はデリケートな時期なので、安全な方法でつわりを乗り切るために、以下の点に気をつけましょう。

注意点1|市販薬は選ばない

つわり症状を和らげるための市販薬は、妊娠中の女性にとって安全性が確認されていない場合があります。

特に妊娠初期は、胎児の重要な器官が形成される時期であり、薬の影響を受けやすい可能性があるため、自己判断で市販薬を使用することは避け、必ず医師に相談しましょう。

注意点2|自己判断での服用は避ける

妊娠中は、些細な体調変化でも不安になるものです。つわりの症状が辛いからといって、すでに持っている薬や他の病気のために処方された薬を自己判断で服用するのは避けましょう。

妊娠中は、普段安全とされている薬でも胎児に影響を与える可能性があります。つらい吐き気や頭痛がある場合は、必ず医師に相談し、指示に従って適切な薬を服用するようにしてください。

注意点3|段階的なアプローチを取る(制吐剤は最終手段)

つわり症状の緩和には、薬物療法以外にも様々な方法があります。まずは食事内容を工夫したり、休息をしっかりとるなどの生活習慣の改善から始めましょう。

それでも症状が改善しない場合は、医師に相談し、漢方薬やビタミン剤などの比較的安全なものから試していくのが一般的です。制吐剤は、吐き気や嘔吐を抑える効果が期待できますが、副作用のリスクも伴います。そのため、医師の指示に従って使用するようにしましょう。

まとめ

つわりは、多くの妊婦さんが経験する妊娠初期の症状です。吐き気や嘔吐、食欲不振、特定の匂いに敏感になるなど、様々な症状が現れます。つわりがひどい場合は日常生活に支障をきたし、仕事や家事が思うようにできない、十分な栄養が摂れないなど、不安に感じることもあるでしょう。このような場合は、我慢せずに医療機関に相談することが大切です。

つわり症状の緩和には、ビタミンB6の摂取や漢方薬の服用、重症の場合は制吐剤の使用など、いくつかの対処法があります。しかし、市販薬を自己判断で服用するのは危険ですので、必ず医師に相談しましょう。

特に妊娠初期は胎児の器官形成期であり、薬の影響を受けやすい時期です。まずは食事内容の工夫や十分な休息など、生活習慣の改善から始め、それでも改善しない場合は段階的に治療を検討することが大切です。

つわりの症状や期間は個人差が大きく、いつまで続くのか不安になる方もいるかもしれません。つわりは多くの場合、妊娠16週頃までには軽快していきます。無理せず、周囲のサポートを得ながら乗り切りましょう。

特に重度のつわりで悩んでいる方は、我慢する必要はありません。無理をすることで、かえって胎児に影響を与える可能性もありますので、まずは気軽に担当医師へ相談してみましょう。

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