いびきを止める方法はある?原因別にできることと医師に相談すべきサイン

夜中に家族から「いびきがうるさい」と言われたり、朝起きても疲れが取れないことはありませんか。いびきは多くの人に見られる現象ですが、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」など健康リスクのサインであることもあります。

この記事では、いびきの主な原因と自宅でできる改善方法、医師に相談すべきタイミングを解説します。セルフケアと治療の見極めに役立ててください。

いびきを止めるには?まず知っておきたい原因

いびきを改善するには、まず「なぜ音が出るのか」を理解することが大切です。

気道が狭くなる仕組みや、生活習慣・体の構造による違いを知ることで、自分に合った対策を見つけやすくなります。

いびきはなぜ起こるのか

いびきは、睡眠中に「空気の通り道(気道)」が狭くなり、空気の振動で発生します。鼻や喉、舌の付け根といった部位が関係しており、鼻づまりや扁桃肥大、仰向け寝などが主な原因です。

疲労や飲酒時だけの一時的ないびきは心配ありませんが、毎晩続く場合は注意が必要です。慢性的ないびきは、睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れていることがあります。

部位主な原因特徴
鼻炎・鼻づまり口呼吸になりやすく、いびきの原因に。
扁桃肥大・口蓋垂気道が狭まり、空気の抵抗が増える。
舌根仰向け寝・肥満舌が喉に沈み込み(舌根沈下)、気道を塞ぐ。

代表的な原因

いびきは複数の要因が重なって起こることが多く、1つの原因だけでは説明できません。ただし、多くの人に共通して見られる「代表的な原因」を把握しておくと、自分に合った対策をとりやすいです。

主な原因には、肥満・飲酒や喫煙・鼻づまり・加齢などがあります。

それぞれの特徴と改善の方向性を、次の表で見てみましょう。

原因メカニズム改善の方向性
肥満舌や喉の脂肪が気道を圧迫減量・横向き寝
飲酒・喫煙筋肉の緩み・炎症禁酒・禁煙
鼻炎・鼻づまり鼻呼吸が妨げられる治療・加湿
加齢筋力低下口腔トレーニング

自分に該当する項目をチェックし、生活改善や医療機関への相談に活かしましょう。

自分でできるいびき対策と生活習慣の見直し

いびきを改善するには、毎日の生活習慣を見直すことが欠かせません。

寝方や枕の高さ、体重管理など、身近なポイントから見直すことで症状が軽くなる場合もあります。

寝方・枕・体重管理などのセルフケア

最初の対策は寝方と生活習慣の工夫です。仰向けより横向き寝が望ましく、抱き枕を使うと姿勢を保ちやすくなります。

枕は高すぎても低すぎても気道を狭めるため、首の自然なカーブを保てる高さに調整しましょう。

肥満が原因の場合は、体重を減らすことが根本的な改善につながります。

また、乾燥した空気は粘膜を刺激するため、加湿器などで湿度を保つことも効果的です。

禁酒・禁煙・鼻呼吸トレーニングの効果

いびきの背景には、日常的な習慣も深く関係しています。禁酒・禁煙や鼻呼吸のトレーニングなど、意識を少し変えるだけでも効果が期待できます。

就寝前の飲酒は喉の筋肉を緩ませ、気道を狭くします。飲む場合は就寝の数時間前(目安:2〜3時間以上)までに済ませましょう。喫煙は粘膜を炎症させるため、禁煙を続けると空気の通りが改善します。

また、鼻呼吸の習慣化も重要です。口呼吸はいびきの原因になるため、鼻で呼吸する練習を行いましょう。

口腔・舌のトレーニングは、いびき(音量・頻度)を下げる報告がある一方、睡眠時無呼吸の重症度(AHI)を確実に改善する根拠は限定的です。

対策効果注意点
禁酒喉の筋肉の弛緩を防ぐ就寝3時間前以降は避ける
禁煙気道の炎症を改善継続が重要
鼻呼吸トレーニング舌・口の筋力を維持継続的に行うこと

市販グッズやアプリを使った改善サポート

セルフケアに加えて、市販のグッズやアプリを活用することで、改善をサポートすることもできます。手軽に試せる方法としては、鼻腔拡張テープが代表的です。鼻づまりを軽減して口呼吸を防ぐ働きがあります。

長期利用や確実な効果を求める場合は、歯科で作製する医療用マウスピースが推奨されます。また、睡眠中のいびきを録音・分析できるアプリも登場しており、自分の睡眠状態を客観的に把握するツールとして人気です。

グッズ主な目的注意点
鼻腔拡張テープ鼻呼吸の確保肌に合うか確認
マウスピース舌の落ち込み防止違和感があれば使用を中止
いびき計測アプリ睡眠状態の可視化録音環境により精度に差が出る

こんないびきは要注意!病気が関係する場合も

いびきが長く続く場合、単なる生活習慣だけでなく、病気が関係していることもあります。

ここでは、放置してはいけない病的いびきの代表例と、医師に相談すべき目安を紹介します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

家族に「呼吸が止まっている」と言われる場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や浅くなる「低呼吸」を繰り返す病気です。

主な症状は、大きないびき・日中の強い眠気・朝の頭痛などです。放置すると、高血圧・糖尿病・心疾患・脳卒中などとの関連が報告されています。単なるいびきと軽視せず、早めに専門医へ相談しましょう。

参考:日本呼吸器学会「I-05 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

放置による健康リスク

いびきが慢性化している場合、「単なる寝相の問題」として放置するのは危険です。特に睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきは、体内の酸素濃度が低下するため、全身の血管や臓器に大きな負担をかけます。

無呼吸状態が繰り返されると、夜間に血圧や脈拍が急変し、高血圧・不整脈・心不全のリスクが高まります。また、睡眠が分断されることで成長ホルモンや代謝ホルモンの分泌が乱れ、糖尿病・肥満の悪化につながることも知られています。

さらに、日中の強い眠気による集中力低下や、居眠り運転などの事故リスクも見逃せません。

関連疾患影響の仕組み放置した場合のリスク
高血圧・心疾患呼吸停止により血圧変動が増える動脈硬化・脳卒中
糖尿病睡眠不足でインスリン作用が低下血糖コントロール悪化
不整脈酸素不足が心臓に負担突発的な心停止のリスク
うつ症状睡眠の質低下による精神的不調集中力・意欲の低下

病院を受診するタイミングの目安

「いびきくらいで病院に行くのは大げさでは?」と考える人も多いですが、次のようなサインがある場合は、放置せずに受診を検討しましょう。

  • 毎晩のように大きないびきをかく
  • 睡眠中に「呼吸が止まっている」と指摘された
  • 朝起きたときに頭痛やだるさがある
  • 日中の眠気が強く、集中力が続かない
  • 寝ている間に息苦しさや動悸で目が覚める

これらは、睡眠時無呼吸症候群の典型的なサインです。特に「呼吸が止まる」「昼間に強い眠気がある」場合は、早めに専門医の受診をおすすめします。

受診先は、睡眠外来・呼吸器内科・耳鼻咽喉科などがあります。症状の程度や原因によって診療科が異なるため、まずは呼吸やいびきに詳しい医師に相談するのが安心です。

医師による主な治療法とCPAP療法の位置づけ

医療機関では、症状の重さや原因に応じて適した治療法が選ばれます。

ここでは、代表的な3つの治療法と、標準治療であるCPAP療法の特徴を紹介します。

マウスピース・手術・CPAP療法の違い

いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の程度と原因によって選択肢が変わります。

軽症ではマウスピース、構造的な問題がある場合は手術、重症ではCPAP療法が一般的です。

治療法主な対象特徴・違い
マウスピース軽症〜中等症下顎を前に出して舌の落ち込みを防ぐ。歯科で作成でき、携帯性が高い。
手術扁桃肥大・鼻の骨のゆがみなど構造的異常気道を狭くする原因を物理的に取り除く根本治療。再発しにくいが体への負担あり。
CPAP療法中等症〜重症装置で気道に空気を送り、閉塞を防ぐ。継続使用で高い改善効果がある。

CPAP療法とは?

CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の標準的な治療法です。

鼻に装着したマスクから一定の圧で空気を送り、睡眠中も気道が狭まらないように保ちます。継続使用で、いびきや日中の眠気の改善が期待できます。

医師の診断基準を満たす場合は健康保険が適用され、自己負担3割で月4,000〜5,000円程度が目安です。

参考:日本呼吸器学会「CPAP(シーパップ)とはどのような治療法ですか?(Q30)

受診から治療までの流れ

治療は検査結果に基づいて段階的に進みます。

まずは問診と簡易検査を行い、必要に応じて精密検査へ進みます。

  1. 初診・問診:症状を医師に伝える
  2. 簡易検査:自宅でセンサーを装着して呼吸状態を測定
  3. 精密検査(ポリソムノグラフィー:PSG):入院して詳細データを取得
  4. 診断・治療開始:結果に基づき治療法を決定。CPAP療法が選択される場合も

まとめ

いびきは生活習慣の見直しで改善することもありますが、長く続く場合は病気のサインかもしれません。特に、呼吸が止まる・朝の頭痛・日中の強い眠気などがある場合は、早めの受診が大切です。

適切な検査と治療で、いびきは改善できます。CPAP療法などの治療により、質の高い睡眠を取り戻し、健康な毎日を過ごしましょう。

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