「家族からいびきがうるさいと言われた」「パートナーが眠れないと悩んでいる」という方は少なくありません。周囲の人からの「いびきがうるさい」という指摘は単なる不満ではなく、深刻な悩みにつながるだけでなく、病気のサインの可能性もあります。
この記事では、いびきがうるさい理由と騒音レベル、病気のサインとしての見極め方、客観的に測る方法、今夜からできる対処法、根本から治す改善法まで解説します。家族関係を守りながらいびきを改善したい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
いびきが「うるさい」と言われるのはなぜ?騒音レベルは最大80〜90dB
| 分類 | 騒音レベル(dB) | 説明 | 日常音の例 |
|---|---|---|---|
| 軽度 | 40-50 | 正常~軽度のSAS | 図書館、静かなオフィス |
| 中等度 | 50-60 | 軽度~中等度のSAS | 通常の会話、掃除機 |
| 重度 | 60以上 | 重度~最重度のSAS、 80~90dBに達することも | 電車内、工事現場 |
※SAS=睡眠時無呼吸症候群 出典: Maimon & Hanly, 2010, JCSM(1,643名の測定データ)
家族やパートナーからいびきが「うるさい」と指摘されるのは、その音の大きさが想像以上だからです。いびきの音の正体は、睡眠中に狭くなった気道(喉や舌の付け根)を空気が通る際に、粘膜や舌が振動して発生する“振動音”です。
主な原因としては、アレルギーなどによる鼻詰まり、それに伴う口呼吸の習慣化、肥満による首周りの脂肪沈着、そして仰向け寝などの睡眠姿勢が挙げられます。これらの要因で気道が狭くなると、音はより大きくなります。
いびきの騒音レベルは通常50~60dB程度ですが、重度の場合は60dBを超え、80~90dBに達することもあると報告されています。これは、走行中の電車内や交通量の多い交差点の騒音に匹敵するレベルです。これほどの騒音が毎晩続けば、同居者の睡眠を深刻に妨害し、睡眠不足や慢性的なストレスの原因となってしまいます。
その結果、「一緒に寝られない」「別室で寝たい」と言われてしまうケースも少なくありません。「うるさい」という指摘は、単なる不満ではなく、深刻な悩みの表れです。いびきを単なる癖と捉えず、早めに改善に取り組むことが、ご自身の健康はもちろん、“家族円満”の第一歩となります。
参考:USC Ostrow School of Dentistry「Snoring Disorders For Dentists」
「うるさい」いびきは病気のサインかも
毎晩続く「うるさい」いびきは、単に音が大きいだけでなく、体に異変が起きているサインである可能性があります。症状が深刻な場合は病院で治療を受けることも可能です。以下のケースに心当たりがないか確認してみてください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性
- 寝ている間に呼吸が止まる/途切れると指摘された
- 大きないびきが突然止まり、しばらくして苦しそうに呼吸を再開する
- 十分寝ても昼間の眠気・頭痛が続く場合は特に注意が必要です
最も警戒すべきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性です。これは、睡眠中に気道が完全に(あるいは部分的に)塞がってしまい、呼吸が一時的に止まる状態を繰り返す病気です。いびきは、この閉塞した気道を空気が無理やり通ろうとするときに発生する音です。
参考:日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」
鼻づまりや口呼吸が慢性化しているケース
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻中隔弯曲症(鼻の骨の歪み)などにより、慢性的に鼻の通りが悪いと、睡眠中に十分な空気を鼻から取り込めません。その結果、無意識に口呼吸となり、舌が喉の奥に落ち込みやすくなって気道が狭まり、いびきが発生します。
この場合は、耳鼻科での治療(鼻炎の治療など)によって、いびきが改善する場合もあります。
参考:NCBI Bookshelf「Nasal Obstruction」
自分のいびきが「うるさい」かを客観的に測る方法

「うるさい」と指摘されても、自分ではなかなか実感できないのがいびきです。客観的に自分の状態を把握するためには、以下のような方法があります。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| いびきアプリ(SnoreLab など) | 音量・時間を自動記録 | 無料・スマホだけでOK |
| 録音アプリ | 自分のいびきを聞き返せる | 精度はやや低い |
| 医療機関の睡眠検査 | 呼吸・心拍・酸素濃度も測定 | SASの診断に必要 |
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家族やパートナーが「眠れない」と悩む前にできる対処法4選
家族やパートナーから「うるさい」と指摘されたり、「眠れない」と悩んでいる様子が見られたりしたら、関係性が悪化する前に、まずは今夜からでも試せる即効性のある対処法で、症状の軽減を図りましょう。
対処法1|寝る向きを変える(横向き寝)
いびきの多くは、仰向けで寝ている時に最もひどくなります。仰向け寝は、重力の影響で舌の付け根(舌根)が喉の奥に落ち込み、気道を最も塞ぎやすくなる姿勢だからです。
対策として最も簡単で即効性が高いのが、「横向き」で寝ることです。横向きになるだけで、舌の落ち込みを物理的に防ぎ、気道が確保されやすくなります。ただ、睡眠中に無意識に仰向けに戻ってしまうことも多いため、抱き枕を活用したり、背中にクッションや丸めたタオルを置いたりして、横向きの姿勢を維持しやすくする工夫も有効です。
対処法2|枕の高さを調整する(首の圧迫を減らす)
毎日使っている枕が、いびきの原因になっているケースも少なくありません。枕が高すぎると、顎を引く形になり首が圧迫され、気道が不自然に曲がって狭くなります。逆に低すぎても、頭が下がりすぎて口が開きやすくなり、結果として舌が落ち込みやすくなります。
理想は、リラックスして立った時と同じように「首の自然なカーブ」が保たれる高さです。タオルを重ねて微調整するなどして、自分の体格や首のカーブに合った枕に見直してみましょう。これだけでも呼吸が楽になることがあります。
対処法3|お酒・たばこを控える(筋肉の弛緩を防ぐ)
特に就寝前のアルコール(寝酒)は、いびきを悪化させる最大の原因の一つです。アルコールには筋肉を弛緩(ゆるませる)させる作用が強いため、普段はいびきをかかない人でも、飲酒後は喉の筋肉が過度に緩み、気道が塞がりやすくなります。
また、たばこも、煙に含まれる化学物質が喉の粘膜に慢性的な炎症や「むくみ」を引き起こし、気道を狭める原因となります。いびきを軽減するためには、少なくとも就寝の3〜4時間前からはアルコールや喫煙を控えることが強く推奨されます。
対処法4|マウステープ・いびき防止枕を試す
市販の対策グッズを試してみるのも一つの方法です。無意識に口を開けて寝てしまう「口呼吸」が原因の場合は、市販の口閉じテープ(マウステープ)で唇を閉じ、鼻呼吸を促すのが有効です。
また、前述の横向き寝をサポートする形状に設計されたいびき防止枕なども市販されています。ただし、これらはあくまで補助的な対策であり、効果には個人差があることも理解しておきましょう。
うるさいいびきを根本から治すには?3つの改善法
即効性のある対処法(対処法4選)は、あくまでその場しのぎの側面もあります。「うるさい」いびきを本質的に改善するには、いびきが起こりにくい体質や習慣を目指す「根本改善」に、並行して取り組むことが不可欠です。
改善法1|生活習慣を見直す(食事・体重・運動)
いびきの原因として非常に多いのが「肥満」です。体重が増加すると、お腹周りだけでなく、首周りや喉の内部、舌の付け根にも脂肪が沈着します。この脂肪が気道を内側から物理的に圧迫するため、いびきが起こりやすくなります。
肥満が原因の場合、減量(ダイエット)が最も効果的かつ根本的な対策となります。バランスの取れた食事、カロリーコントロール、そしてウォーキングなどの適度な運動を習慣化し、適正体重を維持することが、気道の圧迫を解消する一番の近道です。
改善法2|鼻呼吸トレーニングを取り入れる
慢性的な鼻づまりや口呼吸の癖も、いびきの大きな原因です。口呼吸になると、舌が喉の奥に落ち込みやすくなるだけでなく、口内が乾燥して炎症を起こしやすくなります。
日中から意識的に口を閉じ、「鼻で呼吸する」ことを習慣づけるトレーニングを取り入れましょう。口周りの筋肉(口輪筋)を鍛える「あいうべ体操」(「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく動かす体操)なども、口呼吸の改善に役立ちます。
改善法3|マウスピース・CPAP・耳鼻科治療を検討する
セルフケア(生活習慣の改善やグッズの使用)を試みても「うるさいいびき」が改善しない場合、あるいは日中の強い眠気や呼吸の停止が疑われる場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性が非常に高いです。速やかに専門の医療機関(呼吸器内科、睡眠クリニック、耳鼻咽喉科など)を受診しましょう。
- マウスピース(スリープスプリント)
主に軽症〜中等症のSASに有効です。歯科で精密に作製し、下顎を前方に固定して気道を広げます。 - CPAP(持続陽圧呼吸療法)
中等症以上のSASに対する最も効果的な標準治療です。睡眠中、マスクから空気を送り込み、気道が塞がるのを物理的に防ぎます。 - 耳鼻科治療
扁桃肥大や鼻中隔弯曲症など、いびきの原因が物理的な構造の問題である場合、手術が検討されることもあります。
まとめ|「うるさいいびき」は我慢せず原因から対処を
いびきの正体は、睡眠中に狭くなった気道を空気が通る際に粘膜や舌が振動して発生する振動音で、鼻詰まり、口呼吸の習慣化、肥満による首周りの脂肪沈着、仰向け寝などが主な原因です。
いびきがあまりにうるさい場合は病気のサインの可能性があります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に気道が完全または部分的に塞がり呼吸が一時的に止まる状態を繰り返す病気で、大きないびきが突然止まる、十分寝ても昼間の眠気・頭痛が続く場合は特に注意が必要です。慢性的な鼻づまりや口呼吸がある場合は、耳鼻科での治療でいびきが改善する可能性もあります。
客観的に測る方法として、いびきアプリ、録音アプリ、医療機関の睡眠検査があります。今夜からできる対処法として、横向き寝、枕の高さ調整、お酒・たばこを控える、マウステープ・いびき防止枕を試すの4つがおすすめです。根本から治す改善法は、生活習慣を見直す、鼻呼吸トレーニングを取り入れる、マウスピース・CPAP・耳鼻科治療を検討するの3つがあります。
