いびき治療にかかる費用は、その目的と診断内容によって「保険適用」になるケースと、全額自己負担の「自由診療」になるケースに明確に分かれます。最大の分岐点は、医師による睡眠検査を受けて「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」として正式な診断が出されるかどうかです。
この記事では、いびき治療で保険が使えるケースと使えないケース、保険適用される3つの治療法と費用目安、自由診療となる治療例、保険適用で受けるまでの流れ、保険適用を受けるための注意点まで解説します。いびき治療の費用負担を抑えたい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
いびき治療で保険が使えるケース・使えないケース
いびき治療にかかる費用は、その目的と診断内容によって「保険適用」になるケースと、全額自己負担の「自由診療」になるケースに明確に分かれます。治療法ごとの適応対象と費用の目安は以下の通りです。
| 対象(疾患/目的) | 主な治療 | 保険適用 | 自己負担の目安(3割) |
|---|---|---|---|
| 睡眠時無呼吸症候群 (軽度〜中等度) | マウスピース療法(スリープスプリント) | ○ | 約5,000〜10,000円 |
| 睡眠時無呼吸症候群 (中等度以上) | CPAP療法(持続陽圧呼吸) | ○ | 約4,000〜5,000円/月 |
| SAS+構造的原因あり (扁桃肥大・鼻中隔弯曲 など) | 手術治療(扁桃摘出/鼻中隔矯正 ほか) | ○ | 約10,000〜30,000円 |
| いびき単独 (SAS診断なし) | レーザー治療 ほか | × | 自由診療 (例:5万〜10万円) |
| セルフケア・補助 | 市販グッズ/アプリ | × | 自費 (数百〜数千円) |
保険が適用されるいびき治療とは?睡眠時無呼吸症候群が対象疾患
いびき治療で健康保険が適用されるかどうか、その最大の分岐点は「単なるいびき」か、それとも「睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気」か、という点です。原則として、いびき単独の症状(美容目的や音の軽減のみ)では保険は使えません。
保険が適用されるのは、医師による睡眠検査(自宅での簡易検査や病院での精密検査)を受け、AHI(無呼吸低呼吸指数)が一定の基準を超え、「睡眠時無呼吸症候群」として医師による正式な診断書が出された場合に限られます。
治療1|CPAP療法

CPAP(シーパップ)療法は、SAS治療において最も一般的で効果的な保険適用治療です。
特に中等度以上のSAS(一般にAHIが20以上)と診断された場合に適用されます。装置は購入ではなくレンタルとなり、月1回の定期的な受診・指導管理料と合わせて、3割負担の方で月額約4,000円から5,000円程度の費用となります。
関連記事:「CPAP(シーパップ)とは?睡眠時無呼吸症候群の治療法や具体的な使い方、費用目安を徹底解説」
治療2|マウスピース療法
マウスピース療法(スリープスプリント)は、主に軽症から中等症のSASと診断された場合に有効な治療法です。
睡眠中に装着することで下顎を前方に固定し、気道を広げます。これもSASの診断があれば保険適用となり、歯科で精密に作製した場合、作製時の費用目安は約5,000円から10,000円程度(3割負担時)となります。
参考:Sleep「Oral appliances for snoring and obstructive sleep apnea: a review」
治療3|鼻や喉の手術
いびきや無呼吸の原因が、扁桃肥大(のどちんこの両脇が大きい)やアデノイド、鼻中隔弯曲症(鼻の骨が曲がっている)など、明らかに物理的な構造の問題である場合、外科手術も保険適用の治療選択肢となります。
これらの構造的な問題を解消する手術(扁桃摘出術や鼻中隔矯正術など)にかかる費用は、治療内容にもよりますが、3割負担時で約1万円から3万円程度が目安です。
自由診療(保険適用外)となるいびき治療の例
- レーザー治療(喉の粘膜を焼いていびきを軽減)
- 脂肪溶解注射・美容目的の輪郭矯正
- 市販のいびき防止マウスピース
- アプリ・機械による自主対策
一方で、睡眠時無呼吸症候群の診断が下りない場合や、美容目的の治療はすべて自由診療(保険適用外)となります。代表的な例としては、喉の粘膜をレーザーで焼いて引き締め、いびき音を軽減するレーザー治療が挙げられます。
また、気道の脂肪を減らすための脂肪溶解注射や、市販のいびき防止マウスピース、対策アプリ、機械(スマートデバイスなど)による自主対策も保険適用外です。医学的な診断の裏付けがない「美容目的」や「睡眠の質向上」を謳う施術は、すべて自費での支払いとなります。
いびき治療を保険適用で受けるまでの流れ

いびき治療を保険適用で受けるためには、決められた手順を踏む必要があります。まず、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、睡眠専門の外来(睡眠クリニック)などで医師に相談します。そこでSASが疑われると、自宅で可能な簡易検査、または病院に一泊して行う精密検査(PSG)を受けることになります。
その検査結果(AHIなど)に基づき、医師が「睡眠時無呼吸症候群」と正式に診断した場合、保険適用の対象となります。その後、症状の重症度に合わせてCPAP療法やマウスピース療法などの治療法が選択され、保険証を提示して治療がスタートします。
保険適用で治療を受けるための注意点3つ

いびき治療を保険適用で受けるには、いくつかの重要な条件があります。単に「いびきに悩んでいる」という理由だけでは保険は使えず、以下の3つのポイントを理解しておく必要があります。
注意点1|医師による「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の正式な診断が必要
いびき治療が保険適用となるための絶対的な大前提は、それが「病気の治療」であると認められることです。そのためには、医療機関で睡眠検査(簡易検査や精密検査)を受け、AHI(無呼吸低呼吸指数)などの客観的データに基づき、医師から「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という正式な診断を受けることが必須条件となります。
注意点2|いびきだけでは保険適用外になる場合が多い
睡眠検査の結果、SASの診断基準(AHIなど)を満たさない「いびき単独」の症状は、多くの場合、病気の治療とはみなされず、保険適用外(自由診療)となります。例えば、SASと診断されていない人が、音を消すことだけを目的としてレーザー治療などを受ける場合は、全額自己負担となるのが一般的です。
注意点3|定期的な受診と治療継続が保険適用の条件
保険適用は、治療開始後も継続的な管理が必要です。特にCPAP療法の場合、保険診療のルールとして、治療効果の確認や指導のために「月1回」などの定期的な受診が定められています。
医師が使用状況のデータを確認し、指導を行うことが保険適用の条件となっているため、自己判断で通院を中断すると保険適用が外れる場合があります。具体的な保険適用の条件や定期受診の頻度は、治療内容や医療機関の方針によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
まとめ|いびき治療は「睡眠時無呼吸症候群」の診断で保険適用が可能
いびき治療で保険が適用されるかどうかの最大の分岐点は、「単なるいびき」か「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気かという点です。原則として、いびき単独の症状では保険は使えず、医師による睡眠検査を受けてAHI(無呼吸低呼吸指数)が一定の基準を超え、SASとして正式な診断書が出された場合に限り保険適用となります。
保険適用される治療法は3つです。CPAP療法は中等度以上のSASに適用され、装置はレンタルで月1回の定期受診と合わせて月額約4,000〜5,000円(3割負担)です。マウスピース療法は軽症から中等症のSASに有効で、歯科で作製時の費用は約5,000〜10,000円(3割負担)です。手術治療は扁桃肥大や鼻中隔弯曲症など物理的な構造の問題がある場合に適用され、約10,000〜30,000円(3割負担)が目安です。
自由診療(保険適用外)となるのは、SASの診断が下りない場合や美容目的の治療で、レーザー治療、脂肪溶解注射、市販のいびき防止マウスピース、アプリ・機械による自主対策などが該当します。
保険適用で受けるための注意点として、医師による「睡眠時無呼吸症候群」の正式な診断が必要、いびきだけでは保険適用外になる場合が多い、定期的な受診と治療継続が保険適用の条件があるという点です。保険適用を利用したいびき治療を検討している方は、まずは医師による検査を受けるようにしてください。
